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晩さん会で演奏する

 夜になると魔王軍に勝利した事を祝う為の晩さん会が開かれた。


 英雄となった俺達に派閥を超えて、多くの貴族達が物珍しさから群がった。


 もちろん王国の利権を牛耳る三派閥の長、モーリス伯爵、マセラティ侯爵、それに俺が属するクランのオーナーでもあるマイバッハ大公爵とその娘で聖女のビクトリアもだ。


 と言いたいところだが、モーリス伯爵は都合により出席を取り止めたそうだ。


 俺達はマイバッハ派と思われている為、マセラティ侯爵は第二王子を支持する派閥に戻って行った。


 モーリス伯爵の派閥は第三王子もモーリス伯爵も姿を見せず、右往左往していた。


「君には王国音楽祭の時、娘の事で世話になった」


 マイバッハ大公爵は俺に謝罪した。


「いえ、全く気にしてません。お嬢様が何事もなくて良かったです」


 俺はビクトリアを見たが、目を合わせなかった。


「君には迷惑をかけた。王国アカデミーから追い出した連中の目星は既についているのだがね」


 公爵は苦々しそうな顔を俺に向けた。


「あっ、そいつ等ならさっき、俺達が処分しときました」


 俺は軽い感じで公爵に告げた。


「どういう事かね?」


 公爵は驚いた表情で聞いてきた。


「第三王子の近衛兵が因縁をつけて来たので仕方なく第三王子の執務室までついて行ったのですが、ヤツ等に襲われそうになったんで、返り討ちにしてやりました」


 俺は深刻さの欠片も感じさせず、その時の状況を語った。


「それで君達にケガはなかったのかね?」


「全くなんともないです。あえて言うなら、第三王子達の方が、多大な被害にあったと思いますよ」


 俺は公爵に伝えた。


「そうか、わかった。確かにモーリス伯爵も来ていないようだしな。確認してみよう」


 マイバッハ公爵は部下を呼ぶと第三王子執務室がどうなってるのか、確認に行かせた。


「ところで君はビクトリアの恋人と言う事になっていた記憶があるのだが?」


 公爵が俺に聞いてきた。


「確かにそういう事もありましたが、自分は王立魔法アカデミーを追われた身ですので、今はどう答えて良いかわかりません」


 俺は無難な言葉を選んだ。


「それもそうだな、忙しいところ、邪魔をした。落ち着いたらまた会おう」


 そう言ってマイバッハ大公爵とビクトリアは第一王子の方へと向かった。


「旦那さま、さっきのあの女性とお付き合いをして居られたのですか」


 ティナが俺に聞いてきた。


「昔の事だ。それもアイツが言うには恋人のフリという体裁を取り繕ってくれれば良いと言うから、形だけ付き合っただけだったがな」


「そうなんですのね」


 ティナはなにか思うところがあったのか、ビクトリアを目で追いながら(つぶや)いた。


 俺はティナに他の女と付き合っていた事でキレられると思ったが、何事も無かった事に拍子抜けした。

  

 俺達は貴族への応対でろくに食事を取ることが出来なかった。俺達は貴族達が居なくなって、ヒマが出来た段階で食事を取ることにした。


 認識阻害で存在を消して大人しくしていたスコルンに晩さん会で出された肉料理を取り分けてたくさん皿にのせた。スコルンはシッポを振ると勢いよく食べ始めた。


 同時に俺達もそれぞれ食事を取り分けたものを頂いた。


「これ、スゲェ、うめえっス!」


 バズが食べた事もない王宮料理に舌鼓をうった。


「素晴らしいですわ! 旦那さま」


 ティナは俺に顔を向けると、目を丸くして感嘆の声をあげた。


「そうだな」


 俺は相づちをうった。


 それから、しばらくするとあたりが騒がしくなった。俺は何事かと耳をすました。


「第三王子が自分の執務室で、人前に出られないような姿で倒れていたらしい」


 貴族のヒソヒソ話だ。


「モーリス伯爵も一緒にいたそうよ」


 そこへ第三王子とモーリス伯爵、ベルファイア宮廷魔導師が憲兵に連行されたとの情報がもたらされた。


「何があったか知らないがモーリス伯爵も終わりかもしれないな」


「人を虫けらのように扱うような連中だったからな」


 何かしらの事情を知る貴族がつぶやいた。


「とにかくいい噂は聞いたことがないな」


 そばにいた貴族が同調した。


「アイツ等が没落すればこの王国も多少良い国に生まれ変わるだろうな」


 他の貴族も同意した。


 そんなウワサ話が駆け巡ると今までこの世の春を謳歌していたモーリス伯爵に連なる面々は意気消沈して肩を落としていた。


 

 晩さん会も終盤に差し掛かった頃、俺達に演奏の申し出が来た。


 俺とバズは用意して来たギターを取り出し、会場にある広間の壇上に上がって、演奏を始めた。


 会場を埋め尽くす人々は、普段聴き慣れない音色を耳にして戸惑っている様子だったが、次第にその音色に聴き入った。


 俺達は今まで冒険で培ったいろんな経験や思いを曲に乗せ、会場に集う人々にギターの音色を響かせた。


 俺が知る限りにおいて、ギターという概念が存在しないこの世界に、俺達はギターで演奏をした。


 



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