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第三王子ハマーの落日

「なぜ、音楽しか取り柄の無い貴殿が我等の魔法を無効化出来る?」


 ベルファイアは興味本位で俺に問うた。


「それ、俺の従魔のスコルンのおかげだよ! コイツ結界魔法が使えるんだぜ」


 俺は傍にいる従魔を指さした。


「ブッシュウルフか? ソヤツにそんな能力は確認されておらぬはずだが?」


 ベルファイアは怪訝(けげん)な表情で俺に問いかけた。


「コイツがブッシュウルフにしか見えないのはお前の認識だろ、だけど実際、使えているんだから事実として受け入れろ!」


 俺はベルファイアに答えた。


「事実として認めろだと! そんな事、断じて有り得ぬ」


 ベルファイアは眼の前の現実を受け入れる事が出来なかった。


「まあ、信じようと信じまいとお前が決めれば良いだけの話だから俺の知ったこっちゃないな」


 俺はそう言い残すとバズの方を向いた。


「それじゃ、次は俺達の番だな! バズ火炎魔法を頼む!」


「やっちまっていいんスか? 師匠」


「派手にやってやれ!」


「わかったっス!」


 バズが詠唱を唱えるとあたり一面におびただしい数の魔法陣が展開された。


「ベルファイア、だ、大丈夫なのか?」


 (おひ)えるハマーが問いかけた。


「大丈夫でございます」


 余裕の表情でベルファイアは答えたが、そこへ大量の火炎魔法が撃ち込まれた。


 ベルファイアの表情から余裕が消えて思わず、しゃがみこんだ。


 勢いよく撃ち込まれた火炎魔法は王城内を張り巡る結界防御システムが作動してハマー達は事なきを得た。



「師匠、俺の魔法、全然アイツ等のところへ届いてないっスよ!」


「そうみたいだな、結界かなんか発動してんだろ」


「そうなんスか?」


 バズが俺の方を向いて言った。



 王国の結界防御システムのおかげで命拾いしたハマーは自信を取り戻した。


「お前等の魔法も派手なだけで我々の結界には手も足も出ないようだな」


 ハマーは尊大な態度で俺の方を見た。


「それはどうかな?」


 俺は頭の中で曲を(かな)で、パチン! と指を鳴らす。


「今、この部屋の結界に、通常の結界の位相とは逆の位相をぶつけた、その事によって、結界は無効化された」


「レックスとやら、結界無効化などこの世界ではあり得ない。我は貴殿を買いかぶっていたようだ」


 ベルファイアは俺を侮り始めた。


 俺にとっては結界無効化などたいしたことではなかったが、通常の宮廷魔法師レベルではあり得ない事象と認識される程のことなのだろう。


「なんだ、それは! コケオドシのつもりか? テメェのメッキを剥がしてやる! おい、魔法大隊アイツ等を皆殺しにしろ!」


 ハマーは俺の事をホラ吹き野郎とでも認識したのか、大声で命令した。


「仰せのままに」


 ベルファイアが魔法大隊へ指示を出した。その頃、バズは俺にある提案をした。


「師匠、俺に考えがあるっス! 師匠のハチの巣の時の指ぱちんの魔法、俺やりたいっス!」


「出来るのか?」


「任せてください」


 バズはそう言うと魔法大隊の魔法が放たれる前に、瞑想でもするかのように眼を閉じると、パーン! と柏手(かしわて)を一回打った。


 すると魔法大隊は突然、人体発火を起こして、苦しみもがいた後、全て消滅した。あたりには焼け焦げたニオイが充満していた。


「師匠、見たっスか? 俺の必殺技」


 バズは自慢げに語った。


「スゴイな、一体どうやったんだ?」


「敵の体の中に魔法陣を展開するイメージでファイアボールを打ち込んだっス!」


 バズは興奮気味に答えた。その時、ハマー達は眼の前で起きた事に唖然としていた。


「わ、我が、長い年月を掛けて、我の手足となるべくして、育てあげた魔法大隊が一瞬で消えてしまった……」


 ベルファイアは眼の前で起きた出来事に苦悩した。  


「ベルファイア、アレはどういう事だ!」


 ハマーは激昂するも汗が止まらず震えていた。


「レックスとやらが申す通り、本当に結界が無効化されてしまい、我が魔法大隊が消失したかと思われます。なお、人体を発火させるような魔法は初見ゆえ、私めにも理解出来ませぬ」


 ベルファイアは眼の前で起きた事が信じられない様子だった。なぜ、結界が役に立たなくなったのか、なぜ、魔法大隊が人体発火したのか見当もつかなかった。


「おい、ハマーどうした? もう終わりか? もっと俺達を楽しませてくれよ」


 俺はハマーにゆっくりと近付きながら、声をかけるとチワワのようにブルブルと身体を震わせていた。俺は脇を固める二人に目を向けた。


「ベルファイアっていったけ? お前が俺を(おとしい)れたのか?」


 俺はベルファイアを(にら)み付けた。


「私めではありませぬ、その男に命令されただけでございます。お(ゆる)し下さい」


 ベルファイアは頭を地面に(こす)り付けた。


「ハマー、コイツお前が仕組んだって言ってるぞ! 言う事はないか?」


 俺はハマーを睨みつけた。


「俺は何も知らねえ! コイツ等が全部やったんだ!」


 ハマーはベルファイアとモーリス伯爵を指さした。


「モーリス伯爵、ハマーによればアンタのせいだそうだ! アンタの差し金なのか?」


 俺はモーリス伯爵を(にら)んだ。


「ワシは知らぬ、この男の狂言だ!」


 モーリス伯爵はハマーを指さした。


「ハマー、他人に罪をかぶせるのは辞めろよ! お前の味方なんて誰も残っちゃいないんだから」


 俺はため息をつきながらハマーを(さと)した。


「うるせえ! 俺は次代の王になる男だ! 命令するんじゃねえ!」


 ハマーは(あきら)めていなかった。


 俺はハマーを一瞥(いちべつ)すると顎に蹴りを入れた。


「お前に次代の王の座なんて永遠に来ねえよ! さっさっと諦めろ」


「俺の親父は国王だぞ! てめえみたいなザコなんか親父に頼んで処分してやる!」


 ハマーは強気な態度を崩さなかった。


「最後は父親頼みかよ、お前、クズ中のクズだな! 王家に生まれて来なければ、お前こそ、ろくでもないカスだったろうな!」


 俺は床に這いつくばるハマーの髪の毛を鷲掴みにすると怒声を浴びせた。


「……レックス、よく覚えておけ、王家に逆らった者の末路を」


 ハマーが捨てゼリフを履いたので俺は顔面に蹴りを入れてやった。


「……レックス」


 そう言い残すと俺のただならぬ気配に、ハマーは震えが止まらないまま失禁した後、気を失った。


「なんだか呆気(あっけ)なかったな」


 俺は物足りなさを感じていた。


「そうっスね、もう少し暴れたかったっス! けど俺の必殺技を師匠に見せられて満足したっス!」


 バズもやや、暴れ足りなかったようだ。


「旦那さまのカッコいいお姿を見られて満足です」


 ティナは満足したようだ。スコルンも尻尾を振ってるし満足なんだろうなと俺は思った。


 俺達は、第三王子公設執務室を後にして、控え室に戻った。


 俺達の去り際の第三王子公設執務室には失禁して気を失ったハマーと腰が抜けて動けないベルファイア並びに今回の失態で貴族階級を剥奪されかねない事に怯えるモーリス伯爵が取り残された。


 



追放シーンの回収入れてみました。


ハチ、イヌの世話というところを読んでいただくと意味がより取れると思います。


ビクトリアの回収もそのうち入れます。

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