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第三王子ハマー

「師匠、俺達、貴族になってしまうんスか?」


王との謁見が終わって控室に戻る途中、バズが俺に声を掛けた。


「そういう事になるな」


「俺、嬉しいっス! 生き別れになった妹に会ったら自慢するっス」


 脳天気に屈託なく喜ぶバズをみて、俺はやるせない気分になった。


「旦那さま、この後の予定はどうなっているのですか?」


「晩さん会があって、そこで俺達の音楽を披露する事になっている」



 そんな時、第三王子付近衛兵が俺達に声をかけて来た。


「第三王子がお呼びだ! こちらへついて来い!」


 俺達に顔を向けるとぞんざいな物言いで先を歩いた。


 俺は頭に来て、その誘いを断った。


「グダグダ言ってんじゃねえぞ! クソガキどもが! 言う通りにしやがれ!」


 近衛兵は(さけ)んだ。すると俺達の周りをいつの間にか数多くの近衛兵が取り囲んだ。


「師匠、どうするんスか?」


 バズが心配そうに俺の顔を見た。


「面白そうだし、暇つぶしに付いて行って見ようぜ!」


 俺はバズの方を向いて余裕の表情を見せた。バズは安心したように笑った。


 俺達は第三王子公設執務室へ連行された。俺の横には認識阻害を常時発動させる愛犬のスコルンが(そば)にいた。


 何でこんなところにスコルンがいるのか不明だったが、あの超思念体のあすかがスコルンをそそのかしたのだろうと俺は考えた。スコルンは俺達の後をそのまま付いてきた。


 近衛兵が扉を開け、執務室の中に通されると巨大なステンドグラスを背に執務用の机に王国の玉座に似せたイスに座る男がいた。


 その左右にはモーリス伯爵と宮廷魔術師ベルファイアが脇を固めていた。


 俺達はハマーと対峙するように横一列に並んで立っていた。


「久しぶりだなレックス」


 ハマーは俺に尊大な態度で接した。


「そうだな、王都音楽祭以来になるな」


 俺は返答した。


「テメエが英雄だと! 笑わせんじゃねえぞ! どんな汚い手を使ったんだ」


 横柄(おうへい)な態度で俺に質問を投げかけた。


「汚い手なんか使うわけないだろ! お前じゃあるまいし」


 俺が言い返すと余裕な態度は消えて、激昂(げきこうすると玉座に似せたイスを投げつけて来た。


「相変わらず短気で姑息な野郎だな」


 俺がつぶやくと第三王子付近衛大隊が色めき立ち、俺達を取り囲んだ。


「俺の精鋭部隊だ。せいぜいこいつらに可愛がってもらえ」


 ハマーはそう言うとニヤリと(わら)って、高みの見物を決め込んだ。


 俺は敵陣の真っ只中へと踏み込んだ。


 押し寄せる兵士の波。だが、俺はそれらすべてを見切っていた。


 鋭い掌打が兵士の顎を跳ね上げると骨の砕ける鈍い音が響くと同時に、俺はその兵士の体を盾にして背後から迫る三人の攻撃を遮った。


「私も参加したいです!」


 ティナが手を挙げて訴えると戦闘に参加した。囲みを崩す動きは、さながら舞踏のようだった。


 ティナの 低い姿勢からの足払いが、近衛兵たちの足首を次々と刈り取った。


  ティナが立ち上がろうとする者の胸板に掌を当てた瞬間、衝撃が背中まで突き抜けた。鎧の上から放たれた一撃は、内臓を直接揺さぶり、兵士を物言わぬ肉塊へと変えた。


 バズに近衛兵が剣を突き出す。バズは半身をわずかにずらし、切っ先を紙一重でかわすとそのまま剣の柄を伝うように踏み込んだ。


「遅い!」


 バズが口にするとともに掌打が兵士の顎を跳ね上げた。


 俺達の手によって十、二十と折り重なる兵士の山が出来た。


 俺達の拳はすでに赤く染まっていたが、その呼吸は驚くほどに整っていた。


 俺達の瞳に宿る圧倒的な暴力の気配に、ついに近衛兵たちは武器を捨て、蜘蛛の子を散らすように逃げ出した。後に残されたのは、静まり返ったハマー達と、俺達だけだった。


「ハマー、お前達の精鋭部隊、存分に可愛がってやったぞ! 気分はどうだ」


 俺はハマーを挑発した。


「調子に乗ってんじゃねえぞ! おい、ベルファイア魔法部隊を準備しろ!」


「仰せのままに」


 ベルファイアが承諾すると第三王子直属魔法大隊が姿を現した。


「これで、お前等は終わりだ!」


 ハマーは勢いよく叫んだ。


 魔法大隊は俺達を取り囲むように横一列の状態になるとたいして勢いのない火炎魔法を行使した。


「この世から消えろ! レックス!」


 勝利を確信したハマーは高らかに声を張り上げた。


 しかし、魔法大隊の火炎魔法は途中でしぼんで消えた。


「おい、ハマー、お前らの魔法ってこんなものか?」


 俺はハマーを嘲笑(あざわら)った。


「おい、ベルファイア! これは一体どういう事だ!」


 怒りで我を忘れたハマーがベルファイアに詰め寄った。


 ベルファイアは眼の前で起きた出来事にありえないと言うような驚がくの表情を浮かべていた。


「このような事は普通ならありえませぬ。なにかの間違いかと存じます」


 ベルファイアは第三王子に進言した。


「ふざけるな! 実際、眼の前で起こっているではないか! なんとかせよ!」


 勝利の方程式が崩れたハマーは顔からあり得ない量の汗を流し始めていた。


エピソード1にプロローグ作ってあるので先に見てもらってからここを見ると意味が取りやすいです。

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