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刺客

 夕闇が落ち始めた街並みは王国騎士団の兵士達が、いまだせわしなく動き回る非日常の風景だった。しかし、その喧騒の裏側に潜む「違和感」を、俺の肌が敏感に察知した。


「気をつけろ、刺客だ」


 俺は皆に注意を促した。


「わかってるっス」


「イヤな気配がしますわ」


 ジルは黙って頷いた。


 従魔のスコルンが唸り声を上げた。すると結界が常時発動し始めた。


 俺の耳元をかすめたのは、風を切る音ですらなかった。チッ、という微かな破裂音。


 殺気が針のように肌を刺した瞬間、俺は反射的に頭をわずかに傾けた。

 

 視界の端を、紫色の液体が塗られた細い針が通り過ぎ、背後の街路樹に深く突き刺さった。すると木肌がどす黒く変色した。


「吹き矢か…… 」


 毒の致死性を悟った俺の脳が、一気に戦闘モードに切り替わった。


 背後の路地から三人、前方の街灯の影から一人。逃げ場を封じるように、殺気を放ちながら距離を詰めて来た。


「何の用だ?」


 俺の問いかけに答えはなく、代わりに街灯の光を吸い込むような、黒塗りのナイフが(ひらめ)いた。


 先制の一撃は、俺の喉元をわずか数ミリでかすめた。石畳を蹴る音が鋭く響き、通りが一瞬にして戦場へと変貌した。


 俺は沈み込むような体勢で刺突(しとつ)をかわし、相手の懐へ入った。肘を顎へと叩き込み、一人の意識を瞬時に刈り取った。


 ティナは背後から迫る敵の呼吸を読み、振り向きざまに回し蹴りを叩きつけた。重い衝撃音が夜の空気に消えていった。。


 バズの頭上から降り注いだのは、街灯を帯のように引き裂く白刃の(きら)めきだった。


 敵の振り下ろす刀身に対し、バズは真っ向から受け止めず、半歩踏み込み、刀の腹を手の平で弾くようにして軌道を逸らした。


 鋭い速度で振り抜かれた刀の空振りを突き、相手の懐へと潜り込んだ。


 刀は至近距離ではただの鉄の棒に過ぎなかった。


 バズは狼狽する刺客の手首を掴み、関節を逆方向に固定し、逃げ場を失った相手の喉元に掌底を叩き込んだ。

 

 鈍い衝撃音と共に、刺客の体から力が抜け、手放した刀が石畳に落ち甲高い金属音が響いた。


 最後の一人が懐から吹き矢を取り出そうとした瞬間、俺はその手首を掴み、力でねじ伏せた。硬い石畳に、吹き矢の筒が虚しく転がる音が響いた。

 

 俺達は乱れた呼吸を整え、服に付いた埃を払った。周囲を見渡せば、遠くの方で王国騎士団の軍靴の音が聞こえ、この一角だけが世界の時間から切り離されていたように見えた。


「テメエら、一体、何者だ!」


 俺は刺客の一人を問い詰めたが、奥歯に仕込んだ毒を飲み、自らの命を絶った。他の三人も同様に絶命した。


「クソッ、手掛かりを失ってしまった」


 俺は悔やんだ。そこへバズが口を挟んだ。


「コイツ、ギルドにいた『チーム泥舟』の吹き矢のジョーだ!」


「知ってるのか?」


「モーリス伯爵の派閥に属する冒険者の奴らっスよ! あの会場にもいたっス」 


 興奮したバズが言い放った。


「後、ジャックナイフの文太に石切の権左衛門と重戦車のマグロ山っス!」


 俺に思い当たる人物が浮かんだ。


「黒幕は第三王子のハマーか」


 俺は呟いた。


 それから俺達は何事もなかったように再び歩き始めた。


「師匠、体術もイケるんスね!」


「そう言えば身体が勝手に動いていたな」


「それもダンジョン効果だ。今度は頭の中で演奏しているイメージで闘ってみろ」


 何の活躍もなかったジルがシタリ顔で意見した。


「嗚呼、次、やってみるよ」


 俺は返事を返した。


「旦那さま、こんな所にリーメンていうヌードル屋がありますわ! 私、ヌードルにハマっておりますの。ちょっと寄り道していきましょう」


 そんな時、ティナがリーメン屋を見つけた。


「食事を作るのが面倒なだけだろ」


「そんなんじゃありませんわ」


「まあ、そんなに言うなら入ってみるか」


 俺達はメンバー全員でリーメン屋に入る事にした。 

 

 町には魔王軍討伐の為の王国軍が辺境伯領に夜になってもぞくぞくと入って来て殺伐としていた。


 





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