ギルド会議室 クラン三派閥出揃う
俺達が辺境伯領に到着すると領内は慌ただしかった。
俺達はクランに向かい、慌ただしさの原因を職員にたずねた。
「魔王軍が現れました。A級以上の冒険者パーティにギルドから招集が掛かっています」
「ギルド? ここじゃなくて?」
「はい、ギルドです」
クランの職員が言うのでA級の俺達はイヌを連れてギルドに向かう事になった。
「このイヌ、ギルドに連れて行って大丈夫か?」
「多分、大丈夫っス」
「多分って、あてにならないな」
「着いてから、考えればいいっス」
「それもそうだな」
俺はバズの言う事に乗っかる事にした。
ギルドに到着するとバズが何やら思い付いた。
「従魔登録すればいいんじゃないスか?」
「従魔登録?」
「一応、フェンリルっスから似たようなグレートウルフという設定で登録すればいいっス」
「バズ、お前頭いいな! それで行こう」
ギルドの受付で俺はスコルンの従魔登録をしようとした。
「グレートウルフです。従魔登録お願いします」
俺はギルドの受付に登録のお願いをした。
「申し訳ございません、こちらの魔獣はブッシュウルフみたいですので、ブッシュウルフで登録いたしますか?」
「じゃあ、それでお願いします」
俺がそう言うと手続きをしてくれた。
「よし、お前は今日からフェンリル改め、ブッシュウルフのスコルンだ! よろしく頼むぞ!」
こうしてスコルンは俺の従魔になった。
おかげで辺境伯領のほとんどの場所を同伴出来るようになった。もちろんギルド内もだ。
三階にあるギルド会議室にはA級以上のパーティメンバーが招集されていた。
「壮観な光景だな」
「そうっスね、師匠」
そう言ったバズは以前所属していたパーティ『夜明けの真相』のメンバー達に頭を下げていた。
集まったパーティは各クランごとに三つに分けられ、お互いがそれぞれの場所に陣取っていた。
新参者の俺のパーティは所属クランの末席に割り振られていた。
皆が着席した事でギルド長が口をひらいた。
「魔王軍が現れた。王国軍も王都を出たらしいが、魔王軍が攻撃して来るまでに全て到着出来るかは疑わしい」
「はぁ、アイツ等また、冒険者を傭兵として使い捨てにしようとしているんじゃないだろうな!」
「申し訳ないが、協力してくれないか?」
「おい、何言ってんだ! 前の魔王軍との七年戦争で召集された冒険者の多くが犠牲になったというのに、また犠牲になれと言うのか!」
冒険者の一人が声を上げた。
「自分の息子が軍に召集されたからって、マセラティ侯爵が派兵に反対していたらしいな!」
「どうなんだ! ギルド長?」
「何とか行ったらどうだ!」
俺の所属クランの冒険者達が、対立するギルド長に詰問して畳み掛けた。
第二王子を推しているマセラティ派のギルド長は質問にこたえるが要領を得なかった。
「実はこれは王命なんだ」
議論が平行線を辿り収拾がつかなくなった時、ギルド長が絞り出した一言により束の間の静寂が訪れた。
「この中にギルドに所属しながら貴族のヤツがいるみたいだな」
第三王子を推す新興貴族モーリス伯爵に属する派閥の冒険者が会議の末席に座る俺を見て続けた。
「七年戦争時、王国軍の貴族の奴等は俺達を前線に向かわせ、ろくに何もしなかった。そのせいで仲間にたくさんの犠牲者が出た」
「その後のギルド弱体化も全て貴族の奴等の企みだ! そのクソがここに潜り込んでいやがる!」
横から割り込んだ男が俺を睨みつけた。それを見て、他のパーティも感化された。
「お前みたいな貴族クズレは消えろ!」
「ここから出て行け」
俺を見て怒声を上げるも俺が所属するマイバッハ派のクランの冒険者達は冷静だった。そんな中、俺は立ち上がった。
「お前等言ってる事おかしいだろ! ギルド弱体化なんてここに居るクランの派閥のオーナー達がしでかした事だろ、貴族がどうとか言う前に貴族の言いなりのお前等が冒険者辞めたらどうだ」
モーリス伯爵派の冒険者達は沈黙した。
「俺の兄は近衛騎士団に入っていたが名誉の戦死をして貴族の務めは果たしてる! それに俺も貴族として実家を継ぐ権利を既に放棄している」
俺はさらに続けた。
「人の死に向き合うのに貴族も冒険者もない。少なくとも、王国を守る事より俺は身近な家族や世話になった者達を守ることを優先したい!」
俺は会議場を見回した。
「結局、俺が戦いに参加するのはあくまでも俺個人の問題であって、貴族なんて知ったこっちゃないんだよ!」
俺の所属クランの冒険者達は良く言ったという顔をして頷いていた。そして会議は円滑に進み終了した。
その後、クランの代表と高ランクの冒険者メンバー達が俺のところにやって来た。
「レックス君、良くやってくれました。おかげで今日はギルドでの主導権を握る事が出来ました」
クラン代表は俺と握手をした。
「お前達、あっと言う間にA級になったと思ったら、レックス、お前、口も立つんだな!」
そう言って、笑顔で声をかけてくる上級パーティの冒険者達と好意的な会話を交わした後、俺達は帰路についた。
「師匠、何ていうか今日、正式なクランの一員になった気がしたっス」
「そうだな、今までは仕事の為に必要な場所って感じだったからな」
「バズも以前のパーティを抜け出したにも係わらず、皆さん、フレンドリーだったわね」
「確かにそれはありがたかったっス」
そんな事を言いながらギルドを出て歩き出した。
その時だった。




