イヌの世話
俺達は地上に戻ると、ダンジョンで得たドロップ品やクラウス達の残したモノを整理するために、壊れた洞窟の前で一泊する事にした。
「ところでその犬はなんだ」
バズに問いかけた。
「ボス部屋にいたっス」
「なんかパッとしないイヌだな」
「置き手紙があったっス」
バズは俺に手紙を渡した。
「魔族文字だ。俺には読めねえ。ジル、頼む!」
俺はジルに丸投げした。
「コイツはフェンリルだ。名はスコルンと言うらしい」
「フェンリル?」
「ああ、そうだ。スコルの娘らしい」
「太陽を飲み込むと噂されているあのスコルか?」
「そうだ」
ジルは返事を返した。
「なんで、そんな伝説上の生き物が、ダンジョンにいたんだ?」
「ダンジョンの中にもダークフェンリルがいたっス」
「いや、ダークフェンリルはダンジョンの生き物だからダンジョンから外に出られないだろ」
「そう言われれば、そうっスね」
「ジル、手紙の続きを教えてくれ」
「スパルタ教育の父親から逃げ出して、ダンジョンに住み着いたらしい」
「他にはなんと書いてある?」
「エサの時だけ姿を現して、後はひきこもっているそうだ。コイツの面倒を頼むとも書いてあるな」
「エサってダンジョンにエサなんかあるのか?」
「聞いたことないっス」
「ジル、なんか書いてないか?」
「極稀にダンジョンの外に出て魔獣を狩って来ていたらしい」
「何もしないわけじゃないんだな」
俺はスコルンを見て少し感心した。
「それよりコイツの面倒を誰が見るかだ。ジル、お前はどうだ? 同じイヌ科だろ」
俺はジルに話を振った。
「ふざけるな!」
ジルはそう言うと、怒気を含んだ目で俺を睨みつけた。
「仕方ないな、バズ、お前が面倒みろ」
「俺、イヌアレルギーなので無理っス」
バズにも断られたので仕方なく、ティナに話を振った。
「ティナ、面倒見てくれないか?」
「旦那さまは一家の主なのですから旦那さまが面倒見て下さい」
結局、俺が面倒を見ることになった。
「コイツはなんというかフェンリルとは程遠いな」
スコルンは伝説で語られているような崇高な存在とはかけ離れていた。
「まあ、でも、イヌにしか見えないし、フェンリルなどとは誰も思わないだろうから、辺境伯領でも飼えるよな」
俺は気分を切り替えた。
「師匠、この衣装どうするんスか?」
「もちろん、着用するに決まってるだろ! 俺達はクラウス達の伝承者だぞ!」
「そうっスよね!」
バズもノリノリだった。
「私は賛成出来ませんわ」
ティナは反対した。
「コイツは男心をくすぐるな」
ジルは気にいったようだ。結局、ティナ以外のメンバーは普段着としても着用することになった。
バンドセットは貴重品なので、アイテムボックスにしまった。
夜になってもあの時の妙な興奮は拭えなかった。




