音を鳴らす
洞窟に到着すると魔法陣があった。
「ようやくダンジョンに行ける経験値を得たって所か」
「でも師匠、このままじゃ奴らにはかないませんよ」
「そうだな、今から奴等が使っているのと同等の楽器を出すから練習だ」
洞くつ入り口の崩壊を免れた雨が掛からない所で、俺はアイテムボックスから魔導楽器を取り出した。
「わぁっ、スゲェ! アイツラの使っていたのと同等の魔導楽器だ」
そう言ってバズはその中の一つを恐る恐る手に取った。流線型の未来的な楽器をながめると感触を確かめだした。
バズの表情から今まで使用して来た木製の楽器と違い、硬質な感触に違和感を持っているように見えた。
バズは試しに弾いてみた。
「拍子抜けする程、音がならないっス、師匠」
「俺も以前試した時は同じだったよ」
「壊れてるんスかねぇ師匠」
「いや、そんなはずはない。経験値も十分あるはずだし」
そうバズに話かけると横から
「あの時、そう言えば黒い大きな箱がありましたわ。他にも色々あった様な気がしますわ」
ティナが口を挟んだ。
「確か、あのクラウスが言うには雷エネルギーを魔導エネルギーに変換して楽器を動かすとか言っていたな」
そう言って俺はアイテムボックスからダンジョンで得たドロップ品を全て取り出した。
あまりの意味のわからなさに俺は途方に暮れ、頭を抱え込んだ。そんな時だった。
「師匠、こんな物がありました」
手にした冊子を俺に渡した。
「取扱い説明書のようだな」
俺は呟いた。
「レックス、読めるのか」
コボルトのジルが口をはさんだ。
「魔族文字だな、さっぱりわからん。ジル指示を頼む」
「いいだろう」
そう言うと説明書を読みながらジルは指示を出した。その横でティナは注意深く見守っていた。暫くの時が経った。
俺は銀色の金属パーツが散りばめらた魔導ギターの 細いネックを掴み上げると 太いケーブルを拾い上げた。
そして先端の金属プラグを手に取り ギターの底にある小さな穴を見つけるとケーブルを穴に繋ぐと カチッと 乾いた音がして奥まで差し込んだ。
「ヨシ、完成だ!」
俺は魔法の楽器を手にして弾いてみた。期待を胸に膨らませ、弾いた一撃は不発に終わった。
「どうなってやがる! 説明書通り組み上げたのに」
悔しがっている俺にジルが話しかけた。
「雷エネルギーをその黒い箱に注入したのか?」
「いや、していない」
俺は雷魔法で落雷を黒い箱に落とした。すると黒い箱がウイインと音を出し振動し始めたので、取り敢えず音が出るか試して見る事にした。
「バズ、試してみるか?」
物欲しそうにしているバズに聞いた。
「いいんスか」
そう言うやいなや、バズは楽器を受け取った。
「感動っス! これで奴等と同じように弾けるんスね!」
バズは心臓の鼓動が少し早くなるのを感じているように見えた。
バズは右手の一指で一番太い弦を引いた 。ギヤイイィーン! 轟音が炸裂した 。あまりの音量と指先に伝わる激しい振動に驚き 思わずギターから手を離した。
「 なんだこれ 」
驚きで固まったまま バズはふるえる指先を見つめた。 耳の奥に残る残響が 、鉄の弦を張った板がただの楽器ではないことを物語っていた 。
「どういう事だ」
俺が呟くとジルが別の箱を指差した。
「あの箱で音の調整が出来るみたいだぞ」
「そうか、原因がわかったならそれで良い。」
「日も暮れたし、今日はここまでにして明日、本格的に試して見よう」
暗くなって来たので野営する事にした。




