第8話『新しく精霊使いという称号獲得!』
ダンジョンに辿り着いたけど、こうして別のダンジョンに入ったのは初めて。
でもまあ……地下にあるものだから、岩肌のゴツゴツした材質が変わっているわけでも、天井にあるびっしり生えている光苔が別の色に変わっているわけでもない。
違いと言えば、入り口は管理している人か場所で変わるのかわからないけど、扉の材質は元々居た領地の方が豪華だったぐらい。
「さて、肩慣らしをしていくけど。まずはエドとラグの精霊魔法を確認しておこう」
『ワンッ!』
『にゃー!』
あらあら、元気よく返事をして凄いやる気。
今更だけど、ハンノに教えてもらったから精霊ということがわかり、人間の言葉を理解していることもわかった。
だから私たちが話をしているときは静かにしていたり、お馬さんと同じく返事をするように声を上げていたのよね。
と思っている傍から、体が白く光り始めた。
「なるほど、範囲防御と範囲補助のようね」
「そうなの?」
「ええ。はっきりと見えないとは思うけど、エドが風を操る防御結界で、ラグは空間補助のようね」
「なるほど?」
「攻撃手段は、自前の牙か体当たりぐらいしかないから戦闘に参加するなら注意が必要ね」
聞き馴染みのない言葉に理解は追いついていない。
あの子たちが森の中で傷付いて疲弊しきっていた理由は少しわかったかも。
互いを支え合うように庇い合い、反撃することができず防御と逃げの手段しかなかったということね。
あんなに小さくて違う種族なのに……なんていい子たちなの!!!!
「普通の人は判断できないだろうけど、風に包まれているような防御結界は衝撃とか攻撃の威力を抑制することができると思う。空間補助は敵を感覚的に発見できたり、自浄作用が発動し続けるみたい」
「な、何それ凄い」
でも、だからこそ森の中で倒れちゃったのよね。
お馬さんもそうだったけど、攻撃に特化したモンスターから襲われちゃったら抵抗できないもん。
「ちなみにルミナ、これから堂々と歩かせるからには称号を得ることになるわよ」
「称号?」
「正式なものじゃなく、周りから勝手に言われるだけだけどね。【精霊使い】って」
「おぉ、なんかいいかも」
「この街では珍しい方だから、このパーティでの立ち位置は勝手に決まっちゃうわね」
「全然あり。この子たちの飼い主として――違った。契約者として、そう呼ばれるのは本望よ」
『ワンッ』
『にゃーん』
ふふふっ。
私たちの言葉を理解できているってわかると、返事している姿がよりいっそうかわいらしく見えちゃう。
「あ、そういえば。周りの目線が気になって言えませんでしたが、私はとある領地でダンジョン封印の仕事をしていたの。【神聖女】なんて呼ばれて」
「え」
「え」
「え」
「え」
「ん?」
私、何か変なことを言っちゃった?
「リイン、知らないで勧誘したの?」
「う、うん。数年前に出会った友達だったから」
「ワタシは大歓迎だが、本当に大丈夫なのか」
「ボクも大歓迎だけど、同じく心配になってきた」
「あたしも心配が勝ってきたわよ。しかも精霊使いにもなっちゃったし」
「私の存在って、何かよくないの? 指名手配されているとか?」
私は、本当にその世界をほぼ知らない。
この世界に転生して、物心ついた頃には両親から引き離され、この年まで両親の顔すら知らずにあの領地で生活する以外の選択肢がなかった。
だから、神聖女という呼び名は外の世界でどう認知されているかはわかっていない。
現に役割を奪われて追放されるぐらいには、肩書だけのものだと思っていた。
「シルドフェルド領のダンジョン封印を、たった1人で行っていた神聖女。それが世間からの認識よ」
「ええ、事実だわ。リインと出会ったときには言わなかったけど」
「そもそもの話。各地にダンジョンがあって、聖女が封印を施しているのは知っているわね?」
「うん。私がやっていたことだもの」
「でもね、ダンジョンの難易度によって封印は聖女数人で行うものなのよ」
「それは初耳」
私がやっていたときに他の聖女と顔を合わせることはなかったし、その話も聞いたことがなかったし、屋敷内で誰もその話をしてこなかった。
そして、私の仕事を奪った聖女マリナスも1人だったし。
今の話を聞いて思うのは、じゃあ私が担当していたダンジョンの難易度は低いということ。
「一応確認だけど、そのお仕事に就いたのは何歳のとき?」
「6歳の頃からで、10年は経ったね」
「え!? そんな年から!? しかも、そこから10年も1人で!?」
「うん。でも、そんなに驚くこと?」
「驚くことばかりだけど……でもなるほど。領主が変わった年と重なるわけね」
リインだけじゃなく、ミィラ、サーレ、ハンノも体を仰け反らせて驚いている。
さっきから確認されてばかりだけど、何かあるということ?
「ルミナ――いえ、神聖女ルミナが封印していたダンジョンは高難易度ダンジョン認定されている場所だったの。だから、代々能力が秀でている聖女が封印の担当をしたり、その任を放棄しないよう冒険者ギルドやその他組織から支援金を受け取っているのよ」
「なるほど? でもたしかに、使えている人が多かったり敷地も大きかったのはそのおかげだったのね」
「ああなるほど。いろいろと見えてきた」
「ん?」
「この子たちと馬が傷付いていて助けた。そして、例外なく精霊でもあった」
「うん」
「シルドフェルド領の付近には精霊領もあるの。もしもダンジョンの封印が困難になったときに抑え込むため」
「何それ初耳すぎ」
こんなに新事実がポンポン出てきて、それが珍しいものでもなさそう。
私がそれほど外の世界を知らなさすぎるということなんだけど。
「――とりあえず。ここからの細かい話は依頼終了してからにしましょう」
「そうね、長くなるのは確定しているし」
「あたしは、というよりみんな知りたがっているわよ。神聖女ルミナの実力を」
「そうだな」
「だね」
「期待に沿えるよう頑張る」
「今まで散々能力を制御してきただろうから、楽しみね」




