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第25話『彼女が勇者たらしめる絶対的な力』

「これから始まるのは、単純な1回の攻撃と防御」


 ハンノがそう言い終えると、ミィラは大盾を再び手に持ったかと思えば。

 地面にめり込ませるぐらいの力で盾を振り下ろしたかと思えば、ミィラを囲むように赤色のガラス窓みたいな魔法障壁が何層にも展開される。


 本当に今から何が起きるのか、と目線をリインへ向けると。


「な、何あれ」


 引き抜かれて正面に構える剣は、ダンジョンで見ていたものよりも形状を変えている。

 大剣というには大袈裟だけど、当人含む外観で言うとそんな感じ。

 しかも驚きなのは、剣が太陽の光みたいなオーラみたいなものをまとっているように見える。


 そして……。


「ね、ねえ。あれって何?」

「……あれは【祝福の斬撃】ね」

「どう捉えたらいいのかわからない名前ね」

「本人曰く、神様から受けた祝福と言っていたわ。あの攻撃があるからこそ勇者と呼ばれる所以でもある」

「なるほど」

「意志や覚悟と時間で威力が増すみたいね」


 ああ、だからサーレが戦っていたときに最初の1撃以外は手出ししないかったのね。


「じゃあ、あれは?」

「……もしかしたらと思ったけど。やっぱり見えるのね」

「ん?」

「薄々は思ってたが、深く考えなくても神聖女なんだから当たり前ではあるわな」

「まあね」


 2人は何について納得しているのかな。

 私はただ、誰がどう見ても目立って仕方がない、リインの後ろに居る存在(・・・・・・・)が気になっているだけなのに。


「手短に話すと。あたしたちにルミナが見えている存在は視認できていないの」

「え?」

「ボクたちも説明を受けただけだから、詳しくはないけどね」

「リインは英霊の加護と言っていて、あの祝福も関係しているみたい」

「へぇ~。加護なのか祝福なのか、それとも両方なのかな」

「たぶん両方」


 神様と英霊の祝福と加護――と言われても、全然わからない。


 私が見えているのは、リインの背後で手を合わせて祈りを捧げる浮遊した女性。

 頭に天使の輪ではなく金色のティアラを乗せ、背中には羽ではなく赤色のマントを羽織っていて。

 銀の長髪に、衣類は冒険者が身にまとっているものと大差ないもので。

 印象としては冒険者や英雄というよりも、お姫様みたいな印象を抱く。

 でも英霊と呼ばれているのだから、過去の英雄という認識で合っているのかな?


「始まるわよ」


 リインは剣を両手で上へ持ち上げ、そのまま振り下ろした。

 放たれた橙色の光は地面を割り――いや、凄まじい轟音を響かせ砕きながら直進。

 ミィラが複数展開している壁へ激突、破壊、激突、破壊を繰り返す。

 ガラスが盛大に割れた甲高い音と同類の音が響き渡り、全てが割れ大盾へ到達。

 そのままミィラは、後方へ地面を擦りながら強制的に移動させられ続け。

 ギリギリ背後の壁へ到達しない場所で、リインが放った斬撃が消滅した。


「す、凄い」


 私の声が漏れると同時に、観客席にはさっきよりも多い見物人が居て。

 拍手喝采に加え飛び跳ねたりして大盛り上がりが始まった。


「あの凄い攻撃、精神的に辛い場面があるし出すまでに時間がかかるから出し場面が難しいのよね」

「そもそもが強いのに?」


 ダンジョンで見た、サーレにも劣らない速度で、繊細かつ的確に攻撃を繰り出し続けていた。

 流れるような回避能力も見事だったし、あの攻撃があるのならハンノが扱う広範囲殲滅魔法にも引けを取らないと思う。


 そんな総合的な強さを持っていて、精神的に辛い場面であの攻撃を準備しなくちゃいけない場面って訪れるのかな。

 と純粋に思ってしまう。


「別件でのダンジョン攻略。再生能力を持っているラスボスと戦闘していて、あたしの魔法じゃ決定打に欠けていたの」

「あのときはいろいろとしんどい戦いだったな」

「沢山の犠牲者を出しながら戦い、何度もあと少しのところまで追い込んでいるのに再生され続けちゃって。そんな中、全員で総攻撃をし続けリインの盾になって時間稼ぎをし続けたの」

「そんな状況ならサーレが倒せちゃうんじゃない?」

「だよな? ボクも同じことを考えたよ。でも厄介だったのが、物理と魔法の両方に抵抗力がずば抜けていた相手だったんだ」


 ああ……なるほど。

 それはたしかに大苦戦を強いられる、と納得できる。


「そこで、聖騎士カラナを先頭に全員で時間を稼いだの」

「だが結果的に最後の攻撃で討伐された、ボスが放った最期の呪いを一身に受けて……」

「そんなことがあったのね」


 話を聞いているだけでも強い人しかない状況でも、そういった突発的な危機的状況や苦戦を強いられる……それがダンジョンなのね。

 私は能天気かつ気分転換にダンジョンで憂さ晴らし目的で入っていたけど、そのまま突き進んでいたら危ないところだった。

 話にある通り、複数人の実力者が集まっているならまだしも、単身だから対応できなければ死ぬ未来が待っていてもおかしくないということ。


 それと同時に、聖女としての役割であるダンジョン封印も重要だと腑に落ちた。

 今の今まで、効果も及ぼす影響も何一つとして理解していなかったから、こんな機会に恵まれて本当によかったと思う。

 他の聖女もたぶん私と同じく、現在進行形で重要さを理解しきれていない人も居ると思うと、少しでも認識が広まってほしい。


「さて、と。今回はここまでね。撤収撤収」

「せっかくの機会だし、ルミナも試した方がいいんじゃねえか?」

「え? 私?」

「あたしも考えたけど今回はなしね。未知数がすぎるもの」

「だからこそじゃ?」

「あのね。ここら辺が吹き飛ぶぐらいだったら、まあ許容範囲ではなるけど。でももし、街の区画に穴が開くほどの力だった場合どうするの?」

「そんなことある?」

「あったらまずいどころの話じゃないってことよ。男女ジョンを封印している聖女、ではなくて、神の力を使える1人でダンジョンを封印できる神聖女なのよ。ルミナは」


 普段の私であれば、「まあまあ」なんてお気楽に状況を収めていたころだろう。

 でも今、繰り広げられていた演習を目の当たりにした後だと口が裂けても冗談は言えない。

 だってここ数時間の出来事だけで、私は注意を何度か受けた。

 つまり、自覚はなかったけど私の力は容易に沢山の人の目に触れる状況で、気軽に力を使ってはいけないということ。

 それは封印や治癒、の側面だけではなく、防御や攻撃にも適応される話だと思う。


 じゃあ今、同業者である観客が居る状況は避けなければならない。


「もう少し、自分でも自分の力を把握してからにするよ」

「あ~あ。見たかったのによぉ~」

「どうせ、戦闘になれば近くで見ることができるんだからいいでしょ」

「はいはーい」


 話を進めていると、リインとミィラも合流。

 気づけば観客も終わりを察したのか、明るい声色で話に花が咲いている様子で解散している。


「じゃあ、また街を散策しながら宿へ向かおうか」


 リインの言葉を合図に歩き出し、先ほどの反省会をしているみんなの後ろを私は歩き出した。

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