第19話『神聖女が大活躍したと周知される』
「――姉さん!!!!」
私たちは人だかりができている冒険者ギルド館内を人目を集めながら通過し、リインが受付嬢に説明した後すぐ裏へ通され。
そして、とある一室に到着したと思えばミィラがベッドで体を起こしている女性へ飛び抱きついた。
さすがは姉妹というべきか、ミィラと容姿が似ているね。
しかし落ち着いた印象でもあり、声がかすれていくミィラの頭を優しく撫でて優しい眼差しを送っている。
「もう大丈夫。呪印に苦しむ前より体が軽くて、今すぐにでも鎧を装備して剣を振り回したいぐらい」
「でもダメだよ、動けなかった期間があるんだから無理はしないで」
「ミィラ、そちらの方は?」
「ご無沙汰しておりますカラナさん。この子はルミナです」
「リイン、ありがとう。髪の毛が白くてかわいい子ね」
「初めましてカラナさん。私が今回、呪印を解除させていただきました」
「え? 本当に?」
カラナさんは信じられない様子で目を見開いている。
そして向けられる目線は私からリインへ向けられた。
「はい。お気を悪くさせてしまいますが――」
「いいわよ」
「彼女は、館内で状態異常に苦しむ冒険者を発見して回復と解除を実施しました」
「じゃあルミナはヒーラーなのね」
「でも話は続きます。彼女は、その延長線上で館内に居る全員をついでに治療してしまいました」
「それは大変だったわね」
「いえ。正しくは、|1度に全員を《・・・・・・》です」
「え?」
「たった1度で全員を回復と状態異常を解除し、カラナさんの呪印までも解除してしまったのです」
「……え? ど、どういうこと?」
ここで私がズバッと言っていいものか迷いつつ、自分から【神聖女】ですって名乗るのってちょっと恥ずかしいかも。
「自称ではないのですが、私は【神聖女】と呼ばれていまして。みんなを治そうとしたい一心で治療しました」
「【神聖女】……なるほど。噂の聖女が、まさか勇者パーティと同行していたなんて」
「実は今、私は勇者パーティの一員として活動しているんです」
「本当に? でも噂だと、難関ダンジョンを1人で封印している話だったような」
「実は、聖女マリナスに地位を奪われ領地を追放されてしまいました」
「なんて酷いことを……」
今日の出来事というのに、なぜか遠く感じてしまう。
追放された瞬間のことや居心地の悪い広間の空気感も鮮明に思い出せる。
箱入り聖女だった私は世間を知らな過ぎたけど、リインたちと行動していると自分がどれほど重宝されている存在かを知った。
だからこそ、女神様の意思を尊重して世のため人のために力を使いたい。
「でも……」
「何かありましたか?」
「いえ、今はまだ確定したわけじゃないから控えるわ。情報を精査して、後から報告するわね」
「姉さん?」
「神聖女ルミナの力は凄まじいわね。ミィラ、離れてくれる?」
「――うん」
「よっと。やっぱりね」
カラナさんはベッドから軽い身のこなしで起き上るどころか跳び起き、床に着地。
そのまま屈伸したりジャンプしたりし始めた。
「本当に凄い。回復とか呪印解除なんて言葉で片づけられるものじゃないわね」
「姉さん、そんなに体を動かしたら――」
「じゃあミィラ、立って」
「はい」
涙を伝った後を腕で拭ったミィラは、指示通りに立ち上がる。
すると。
「ちゃんと受け止めてねっ」
「なっ!?」
「ほら、どうかしら。信じてもらえた?」
「嘘……」
何が始まるのかと思ったら、カラナさんはステップからの右ストレートをミィラへ打ち込んだ。
凄い速度で伸びてくる右拳をミィラは受け止めたが、ズズズッと床を擦って後方に動いた。
ミィラが押されただけでなく表情に驚愕を露にしているから、カラナさんは言葉だけでなく本当にピンピンしているのだろう。
止まったかと思ったけど、まだズルズルと少しづつ押されている。
「力がみなぎってくるの。今だったら、あの失敗を覆すことができそうなぐらい」
「す、凄い。全盛期の姉さんがここまでだったとは」
「そういえば、リインと一緒に行動するようになってから手合わせをしていなかったわね」
「手合わせていた居た頃が懐かしいです」
「まあでも、今となったら神聖女ルミナが居るから余裕の余裕でしょうけど」
「任せてくださいっ」
急に話題を振られてちょっとビックリしたけど、返事は元気よく!
カラナさんは拳を収め、私の方へ体を向けて姿勢を正してくれた。
「さて、と。私は完全復帰できた。この事実を世間に公表しようと思うけど、意見を聞かせてほしい」
「それに関しては大丈夫です。先ほど方針が決まりましたので」
「これから先、いろいろと面倒なことに巻き込まれると思うけど、私は全面的に協力する」
「ありがとうございます」
「命の恩人だからね。もしものときは頼ってほしい」
「よろしくお願いします!」
私とカラナさんは握手を交わした。
「そして、その子たちは飼っているのかい?」
手を解いたと思ったら、姿勢を低くしてエドとラグに下から手を差し伸べた。
「この子がエドで、この子がラグです。実は精霊でして」
「え、聖女でもあり精霊使いなの? しかも2体と?」
「はい。森で偶然出会いまして。怪我を治療したら懐いてしまい、名付けをしました」
「触ってもいいかな?」
『ワンッ』
『なーお』
カラナさんはニッコニコでもふもふを堪能するだけじゃなく、エドとラグも尻尾を左右にふりふりして気持ちよさそうだし嬉しそう。
わかりますよぉ~いいですよね~かわいいしふわふわですよねぇ。
「サーレとハンノも久しぶりだけど、元気そうね」
「ボクは、いつでも動き始めると思っていたけどね」
「はははっ、サーレは相変わらずだね」
「あたしだっていつも通りですよ。前よりも強くはなっていますけど」
「個人的にはハンノと手合わせは今でも避けたい気分だよ」
カラナさんとみんなのやり取りから、仲の良さが伺える。
勇者パーティと聖騎士の連携力があったからこそ、例のダンジョン攻略が成功したのかもしれない。
結果として、私はわからなかったけどカラナさんが代償を支払ってしまったようだけど、今がよければ全てよし! ということで。
「よーし。活力補充完了! ありがとうねエドちゃん、ラグちゃん」
『ワンッ』
『にゃ~』
よしよし、と最後に撫で終わった後すぐバッと立ち上がったカラナさん。
「いろいろと忙しくなるわよ。『神聖女ルミナは勇者パーティに加入して偉業を成し遂げた』この事実を報告するところから」
「よろしくお願いします。わたしたちはいつも通り活動しているのですれ違いが起きてしまった場合、申し訳ございません」
「それは仕方がないよ。じゃあまた後でっ」
患者専用の衣類を着たまま、カラナさんは元気よく裸足のまま部屋を出て行った。
「じゃあ、わたしたちも行きましょうか」




