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第18話『神聖女は単身で偉業を成し遂げる』

 冒険者ギルドから出て、リインが手を放してくれて施設前の広場で足を止める。


「ねえルミナ。自分が何をやったかわかってる?」

「みんなの傷や状態異常を治してあげたよ」

「それだよそれ」

「何かダメだったの?」

「ダメじゃないけど……」


 私は聖女であり、女神様の力をそのまま扱うことができる。

 自称ではないけど、神聖女という呼ばれ方は適切だと思っていて、女神様の人々を癒す意思に従い力を使っていた。

 だから今回も、どうせなら人のためになると思ってギルド館内に居た冒険者全員を回復したり状態異常を解除してあげたの。


 みんなの表情は怒っているようには見えない。

 どちらかと言うと、ため息混じりに呆れている感じ?


「事前に注意しなかったわたしにも非はあるけど、自分の立ち位置って理解している?」

「立ち位置って? 勇者パーティのメンバーってこと?」

「それはそうだけど、自分が【神聖女】ってこと」

「うん、わかってるよ」

「わかっていないことがわかったわ」

「どういうこと?」


 私が何かを理解していないようで、リインは頭を少しクラッとさせて呆れているようだ。


「【神聖女】って、世界で1人しか居ないの」

「そうなの?」

「わたしが把握している限りでは、だけど」

「ほうほう」

「要するに、引く手数多な存在ってこと」

「他の聖女も似たようなことはできるんじゃないの?」


 私は他の聖女を見たのは、追放されるときに見たあの瞬間が最初で最後だった。

 あのときも結局は扱える力を目の当たりにしたわけじゃないから、正直に言うと他の聖女が何をできるのかわからない。

 みんなの話だと私と同じでダンジョン封印ができるらしいけど、だったら能力に差はあっても同じことはできるはずでしょう?


「例のダンジョン攻略の際、わたしたちも初めて聖女とパーティを組んだ。でも彼女たちにできたのは回復だけだったの」

「じゃあ同じじゃない?」

「全然違う。冒険者のヒーラーは、ルミナと似ていることができるけど、聖女たちは力を隠していない限り回復しかやっていなかったの」

「回復力が凄かったとか?」

「どうしらね……凄まじい、という印象は抱かなかったわ。だからたぶん、封印の力に特化しているんだと思う」

「なるほど」


 聖女協会がダンジョン封印に、聖女を派遣しているという話をしていたから納得がいく話だ。


「でもそれと、私が人目につくところで力を使うのに関係はあるの?」

「まだ方針を固めていなかったからの危惧なだけ」

「私は別に大丈夫だよ。みんなも一緒に居てくれるし」

「なら、今ここで方針は決まった。みんなもいいね」

「もちろん」

「はいはい」

「はーい」

「なら、少しだけ離れましょう」


 私の力を制限しなくていいのかな? と思いつつ歩き始める。

 でもなんだかリインの横顔が、少しだけ強張っているような気も?


「ここぐらいでいいかな」


 路地裏に入り、リインは足を止めて振り返った。


「ルミナがさっき範囲回復して、とある重要人物の病気が完治したの」

「何その凄そうな響き」

「実際に凄いのよ。だって、療養中で表舞台から姿を隠していた聖騎士なんだから」

「聖騎士?」

「そ、それは本当なのか!」

「ええ。姿を直に見たわけじゃないけど、裏の方で受付嬢たちが大声を出していたもの」


 聖騎士って、名前だけでも凄そうなのはわかる。

 でもそれ以上にミィラが、前のめりにリインへ近づいている方が気がかりだ。


「よかった……本当によかった……」

「ミィラの知り合い?」

「ああ。聖騎士カラナはワタシの姉なんだ」

「凄い家系。聖騎士の姉に勇者パーティの盾って」

「ワタシは姉に憧れて、今の自分があるからな。凄いのは姉の方だ」

「じゃあこんなところに居るより、挨拶に行った方がいいんじゃない?」


 普段は少し硬めの表情なミィラが、こんなにも感情を出しているのだから相当嬉しいんだろうし。

 こそこそと隠れるような真似をしなくても、さっき方針が決まった流れじゃなかった?


「聖騎士カラナは、例のダンジョン攻略戦でラスボスと一緒に戦ってくれた人であり、不治の病として知られるダンジョンの呪印を刻まれた人でもあるの」

「ダンジョン呪印? それを私が治したってことが大変なの?」

「そりゃあそうでしょ。不治の病よ。世界初の治療成功であり、偉業以外の何ものでもないの」

「神聖女ですから、えっへん」

「ルミナって世間知らずにもほどがあるでしょ」

「箱入り娘だから仕方ない!」


 つくづく自分が世間知らずなことは身に染みている。

 でもだから、と落ち込んでいるよりも新しいことを沢山知ることができるとポジティブに考えた方がいい。


 だから私は両手を腰に当てて、鼻息を思い切り吐きながら胸を張る。


「わかったわかった。全て杞憂だったということね」

「ん?」

「わたしたちは国家を――もしかしたら世界を相手にルミナを守らなくちゃいけなくなるかもしれない」

「え? そんな大事になるの?」

「なるわよ。でも、ルミナを見ていると考えすぎだったわね。こっちまで大丈夫な気がしてきた」

「大丈夫大丈夫。私たちが偉業を達成し続けたら、誰も手が出せないでしょ?」

「簡単に言ってくれるけど、たしかにその通りね」


 でもリインが心配してくれている通り、私は自分が扱える力を現実的に見た方がいいのかもしれない。

 覚悟を蔑ろにしちゃったわけじゃないけど、世界を敵に回す覚悟をしてくれたことに報いるぐらいは考えなくちゃね。


 リインの右手を両手で包み込み、私の意思を伝えなくちゃ。


「私、みんなと一緒に頑張るよ」

「ルミナ……」

「だからミィラのお姉ちゃんのところに、挨拶に行きましょう」

「本当にいいのか?」

「姉妹水入らず。大切な家族なんだから、お見舞いに行きましょ」

「ありがとうルミナ」

「じゃあ冒険者ギルドへ出発進行ー!」

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