第17話『神聖女という名の万能回復支援職』
ご飯を食べ終わった私たちは、依頼報告のために冒険者ギルドに到着。
周りから目線を向けられる覚悟を決めていたんだけど、何やら騒がしい?
「何かあったのかな」
通路から左側、休憩スペースのところに苦しそうに座り込んでいる人たちの姿が。
倒れているのは合計で5人で、仲間であろう3人が武器を代わりに持っているみたい。
「ねえ、ちょっと話を聞いてきてもいい?」
「いいけど、わたしは報告してきちゃうけどいいかな」
「うん」
「じゃあワタシが同行しよう」
「ありがとうミィラ」
二手に分かれ、とりあえず大丈夫そうな人に声をかけてみる。
「あの、すみません。何かありましたか?」
「んあ、ああ。ダンジョンでしくじってな。状態異常のモンスター相手に立ち回り方を失敗して、このありさまなんだ」
「大丈夫――じゃなさそうですけど、解決方法はありそうなんですか?」
「ポーション屋に駆け込むか、ギルド職員が回復職を手配してくれるのを待つだけだな」
「待っている間は、このままなんですね」
「俺たちが回復職を仲間に加えられなかったのが悪いんだ。こればかりは仕方がねえ」
ギルドに初めて入ったときみたいな感じに下へ見られると思ったけど、普通に接してくれる人も居るんだ。
ミィラが圧力になっているわけでもなさそうだし。
たしかに説明を受けた通り、みんな武器や防具を装備しているけど杖を持っている人が居なければ、回復ができそうな人も居ない。
よし、じゃあちょっと聖女としての実力を披露しちゃおうかな。
ダンジョンでは不完全燃焼だったし、人のために力を使うのは女神様の想うところだからね。
「私、回復できるんですけどやっても大丈夫ですか?」
「んあ? ああ、まあ今回は毒を受けちまったからな。徐々に削れていく体力を回復してもらえると助かる」
「ルミナ、いいのか?」
「うん。人が困っていて、私にできることがあるのならやりたいもの」
「……わかった」
「ありがとうミィラ」
「んげっ、どうしてこんなところに勇者パーティの【剛盾】が!?」
「そんなことはどうでもいい。今からルミナが治療する、静かにするんだ」
皆さんの前に踏み出し、膝を追って腰を下ろす。
5人が倒れている理由は毒の状態異常。
さっき話をした人もそうだけど、武器を担いでいる人たちも所々に切り傷を負っている。
「【スウェルヒールエリア】【ディルウェルエリア】」
傷を癒し、状態異常を解除エリアを展開。
緑と白の光が辺りへ広がり、この程度ならすぐに快復する。
「え?」
よかった。
みんな気怠そうに顔を歪めていたけど、すーっと表情が明るくなっていく。
「これで大丈夫です」
「う、嘘だろ……まずは礼を言わせてくれ、ありがとう」
「でもどういうことなんだ。毒状態の人間を5人まとめて回復、いや快復させちまうなんて」
「困ったときはお互い様ですので」
立ち上がって膝を払う。
「って、待ってくれ。もしかして、俺たちの傷も癒してくれたのか?」
「もちろんです。でも回復してくれる人が居ないなら、無理は禁物ですよ。お金稼ぎも大事ですけど、全ては命があってこそなので」
「あ、ああ。今後は注意するよ――じゃなくてさ!」
「他にも何かありましたか?」
「おい、お前もか、お前もか」
毒が治った人たちと他の武器を持っていた人も、傷が癒えたことに気が付いたみたいで動揺している。
「こ、こんなことができる回復職の人が居るなんて……」
『ヘッヘッヘッ』
『ぬなーお』
「白い髪に、白い犬と猫を連れ、隣には【剛盾】――も、もしかして噂の勇者パーティの新メンバーって」
「はい、私です。ちなみにこっちはエドで」
『ワンッ』
「こっちがラグです」
『にゃ~』
「そして、どちらも精霊です」
「んなっ!? ヒーラーで、しかも2体の精霊使い!? な、なるほど……さすが勇者パーティに入るだけはあるな。あまりにも常人離れしすぎている……」
ん? なんでそんなに大袈裟な反応を示しているの?
だって、みんなの反応とか話によると【精霊使い】というのは珍しくない方なんでしょ?
他の人でまだ見たことがないけど、それは街に来て日が浅いからってことなんじゃ?
「せめて金を払わせてくれ。ここまでのことをしてもらって感謝を伝えるだけじゃ気が済まねえ」
「いえいえ、お気になさらず。お金はこれから稼いだお金を貰えるので」
「違う違う。名誉のために金を払うんじゃなくて、対価に対しての報酬を払おうとしているんだ」
「いえいえいえ、お気になさらず。困ったときはお互い様ですので、他の誰かが困っていたら手を差し伸べてあげてください」
「違う違う違う。ここまでの神業を施してもらって、対価を払わないと罰が当たるって言ってるんだ」
「いやいやいやいや」
「違う違う違う違う」
もうっ、私はお金をもらうためにやったんじゃないのにっ!
助けたいから助けたわけだし、力を見せびらかすために使ったわけでもない。
困ったときはお互い様で、善意は巡るのだから「ありがとう」だけでいいのに。
「取り込みのところ申し訳ないが、どうやらルミナに礼を言いたい人は沢山いるようだ」
まさかそんな、と思いながらミィラの方へ振り向くと、いつの間にか見物人ぽい人たちが集まってきていた。
数は……30人ぐらい? 正確にはわからない。
「呟きを聞き取るに、『報酬を得て回復しようと思っていたが傷も痛みもなくなっている』という話が大半を占めている」
「そうなの?」
「う、嘘だろ……こんなの聖女ぐらいしか――いや、もっと上位の存在ぐらいしかできないだろ……いったい何者なんだ」
「私はルミナよ」
「だから違うって……」
「ねえちょっと、ちょっと離れた間に随分と人気者になったのね」
リインが人の塊をかき分けて出てきた。
「げっ」
リインが出てきた瞬間、みんな道をバッと開け、その間をサーレとハンノがゆっくりと歩いてきた。
目の前に居た男の人も離れ、座り込んでいた人たちもバッと立ち上がって離れてしまった。
「うわー、なるほどなるほど。あんまり目立つことはしないと思ってたけど、計算違いだったようね」
「何が?」
「わたしも報告中にギルド内が光って驚いたけど。要するに、ギルドの管内に居る全ての人を回復したり状態異常を解除したんでしょ?」
「うん。せっかくならみんなをって思って」
「はぁ……わかっていないから言っておくけど、みんな何事かと思って集まって。傷を治してくれたりしたことに感謝しているってことよ」
「なるほど。みなさーん、お気になさらずー!」
ちょっと遠くから「だから違うって」という声が聞こえてきたけど、たぶんさっきの人。
こんなこといつだってできるんだから、気にしなくていいのに。
「まあいいわ。みんなはそう思っているってこと。集まっていると他の人に迷惑がかかるから、わたしたちは外へ行きましょう」
私はリインに腕を掴まれて、半ば強引に外へ連行されてしまった。




