第20話『神聖女を追放した領地は蝕まれる』
「そういえば、わたしたちの生活圏はギルド付近だから宿も近くなの」
「提供されるご飯が上手いから、朝から腹も満たされて気分もいいんだ」
「へぇ~!」
夕日に照らされ始めた街は、昼間とはガラッと様変わり。
人の波は相変わらずだけど、すれ違う人の顔には疲れが見えたり、晩御飯を楽しみにしている子供の声があちらこちらから耳に入ってくる。
賑やかな打ち上げの予定を立てる声も聞こえてくるし、明日の予定を今から話している人なんかも。
昼間と違うところはまだまだある。
飲食店から漂ってくる匂いは、なぜか日中よりも空腹を誘う。
それだけではなく店内から届くのは賑やかで陽気な声もあって、既に宴会が始まっているのかも。
なんだかんだ今日はエネルギーになりそうな食べ物を口にしていなかった。
私にとってフルーツの特盛は主食と例えても過言ではないけど、さすがにお肉とかお米とかを食べたくなってきてしまう。
「部屋も広くて、ベッドもふかふか。お風呂も完備」
「いいねいいね~」
「珍しく庭もあって、夜空を眺めながらご飯を食べられたりもするんだ」
「おぉ~!」
「あたしはサウナと冷水風呂もお勧めよ」
「ほうほう」
な、なんとサウナもあるなんて。
しかも楽しみ方も、転生前の世界観と一緒だしお風呂も期待しちゃえそう。
あ、エドとラグはお風呂ってどうなのかな。
よくワンちゃんやねこちゃんは、お風呂が嫌いだったりするって話を動画とかで見ていた。
中には好きな子も居るらしいけど、嫌がられたり暴れられたりしたらどうしよう……森の中で生活していたから、人間的な生活に拒絶反応を示さないでくれると嬉しいけど……。
まあ、なるようになる。
これから一緒に生活していくんだから、根気強く付き合うし、本当に嫌そうなら別の方法を模索すればいいだけ!
「風呂上がりのミルク一気飲みが最高なんだよなぁ」
「サーレは、時々服を着ないで豪快に飲み始めるからハラハラするのよね」
「ハンノだって、タオルからはみ出しそうになって危ないだろって」
「ちょうどいい大きさのタオルがないのよねぇ~」
「なんだよその眼は」
「いいえ? 別に?」
「喧嘩ならいつだって買ってやる」
でもたしかにハンノはローブで全身のシルエットが隠れているけど、よく見てみると立派なものが胸部についている。
対するサーレは、軽装備だから最初から分かっていたけどスラッとした体系だから、いがみ合ってしまうのは仕方がないのかもしれない。
私とリインは同じくらい標準だけど、でもその理論でいくと、ミィラは装備で隠れているから未知数ではある。
姉のカラナさんを参考に考えると、一番のボンキュキュッな体系かもしれない。
「もう少しで到着するよ」
「この通りって、昼食を摂ったあのお店の近く?」
「そうだよ。宿選びの参考にもしたんだ。わたしもそうだけど、みんなお気に入りになっちゃったから」
「そして、例外なく私もっと」
「ちなみに、サーレも言っている通り宿の料理も絶品なの。疲れた体に染み渡る味っていうのかな」
「味が濃いとかしょっぱいとか?」
「それもあるけど、なんかこう――食べたらわかるよ」
「楽しみっ」
全てを失って領地を追放されたときには、正直どうなってしまうか心配で不安だった。
でもお馬さんと出会って、エドとラグと出会って。
いろんなことがあって、みんなと出会って、ダンジョンで暴れて、みんなを癒してカラナさんを助けちゃった。
今の私に不安はなく代わりにあるのは、みんなと私の笑顔と新しいやりがい。
女神様の意思を引継ぎ、力を使い、みんなを癒して助ける。
世のため人のため、これからも頑張っていこうっ!
――――――――――――――――――――
シルドフェルド領にて。
広大な大地を所有する領地を有するシルドフェルド家は、ルミナを追放してからというものの毎日堕落した生活を送っていた。
メイドや執事などは与えられた仕事をこなしていたものの、領主タレルを筆頭に聖女マリナスや側近などの人間は飲み食いを繰り返し、管理などは呆れるほど手を付けず杜撰なものとなっている。
野望や汚い感情が渦巻き、支援金をダンジョンの何にも使うことなく無駄遣いで溶かし続けていた。
「はっはっはっ。ダンジョンなんて所詮はこんなもの」
「わたくしが居るだけで、なんてこともないですわね」
「聖女ルミナだったか? 本当にまともな仕事をしていなかったとは。生活費の全てを返せっての!」
「あらあら、そんなことは無理ですわよ。だって、何もしないで迷惑を掛け続けた女なのですから」
広間のソファで寛ぐ2人は、ワインを片手に机の上に盛られたフルーツを貪り続ける。
「俺には本物の聖女のマリナスが居てくれるから安心だ」
「ええ。わたくしは居るだけでお役に立てていますわ」
「なんて心強いんだ。まあだが、ダンジョンがなんだというのだ。お父様とお母様は何を固執していたんだ」
「本当にその通り。ダンジョンなんて、お金が舞い込んでくる道具なのです」
清く正しくダンジョンと領地を収める領主の姿は、そこにはなく。
形相が歪み、腹のうちが真っ黒く染め上がったタレルは統治のことなど頭になく、隣に居る聖女マリナスに心酔しきっている。
マリナスもまた、広大な土地と巨万の富を獲得できる優越感に浸っており、ダンジョンのことなど考えておらず。
そう、彼らと彼女らはルミナが施した封印の力の残滓がダンジョンをギリギリ封印できていることを知らない。
しかし時は有限ではなく、力の残滓は徐々に薄くなっていきダンジョンに潜むモンスターたちはそれに気づき、地上を目指す準備を始める。
圧倒的な力によって強引に封印されていた腹いせをするため、ただ着々と準備を整え、しかし確実に。
ただモンスターたちよりも先に、ダンジョン内から魔力が少しずつ溢れ始めるのであった。
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