第13話『神聖女と勇者パーティは超快進!』
「ねえハンノ。私たちって役割ありそう?」
「どうだろう。でもこうなってるのはルミナが原因だからね」
「私が悪いみたいに言わないでよ」
なんということでしょう。
私が施したバフが効きすぎているのか、前衛3人の快進撃が止まらない。
ここからは警戒心を持って慎重に進んでいく、という話だったはずだけど……無尽蔵の体力を獲得した如く暴れ回っている。
もちろんミィラの視線は常に感じているから、後衛も気にかけていることはわかるけど、エドとラグも居るからか最初ほどの視線は感じない。
「あれもこれも、体験したことのある補助魔法なんて比にならないわよ」
「私も人に使うのは初めてだから驚いてるの」
「こんな逸材をダンジョン封印するためだけに拘束し続けていたなんて、『世界の損失』以外に当てはまる言葉が出てこないわ」
「でも生活しているときは、外の世界こそ知らなかったけど過酷な環境というわけではなかったよ」
「そりゃあそうでしょ。こんな逸材に逃げられたら家の損失になるのだから」
私って、自分で思っていた以上に凄いらしい。
たしかに1人でダンジョンに潜ってモンスターをボコボコにしていたのは事実だし、大規模なダンジョンを封印するためには数人の聖女が必要だということもわかった。
そして今、初めて人に支援バフをかけて効果が凄いことも把握できて、挙句の果てに今はエドとラグまでも居る。
ここまで条件が揃えば規格外ということを自覚しなくちゃだよね。
しかも今、たぶん警戒しつつも連携して討伐するような少し大き目なモンスターでさえ、3人だけでズバッとドカッとガバッと倒してしまった。
一息つくのかと思ったけど、みんなの足も腕も全然止まる気配を見せない。
「ねえ、魔法の威力が向上する支援バフとかってないの? わたし専用みたいなの」
「うーん……残念ながら、今のところはないかな」
「それは本当に残念。まあでも、これだけ常人離れした動きができるのなら自分で弱点を補えるから、凄い貢献してもらってるんだけどね」
「即時発動できる魔法が待機しているんだから、ちょうどいいと思うよ。どれぐらいが上限なの? さすがに無限じゃないよね」
「ここだと周りに人が居ないからいっか。待機できる魔法は全部で10個。これも練習して増えたから、まだまだ増えるとは思う」
「ほえぇ~、凄い」
ハンノだけの話を聞かせてもらったけど、たぶん前衛3人にも他の何かがあるんだと思う。
「そういえば、ダンジョンってそれぞれ出てくるモンスターとかが違うんだよね?」
「まあ、そうでもありそうではない、と言うのが正しいと思うけど」
「なるほど。じゃあ街の近くにある、このダンジョンって最深部はわかっているの?」
「推測では100階層みたい」
「じゃあ私が知っているダンジョンと一緒なんだ」
「聖女に頼らないで冒険者が管理し続けることには賛成だけど、『攻略しないように』って無理な話よね。モンスターを討伐しないと地上へ出てきちゃうのに」
「それはたしかに」
「でもさ、本当にどうするんだろうね。50階層を攻略したときでさえ多大な犠牲者が出てしまったというのに、100階層なんて未知も未知。一応、各ダンジョンの最下層付近に出現したり生息しているモンスターは地上へ進行しないみたいだけど」
「そうなんだ」
その話は初耳。
でもそうだよね、今の話を聞いている感じだと40階付近からモンスターの強さはさっきまで戦っていたモンスターとは桁違いの強さを持っていそうだし。
この20階層付近でさえ、警戒を怠らないよう注意された。
30層付近なら人数をかけたくなり、40階層付近では犠牲者が出る――じゃあ50階層、60階層……となれば、より強力なモンスターが出現するようになるということ。
そんな強いモンスターが上の階層へ移動してくれば、大惨事になる未来は容易に想像できる。
じゃあ、それに対抗できる冒険者が居なければダメだし、対処できるよう強くなっておかなければならない。
でも攻略はしすぎないよう命令されているなんて、矛盾もいいところ。
もしもの有事に対応できず死を待つだけになってしまう。
「私たち、もっと強くならなくちゃいけないんだね」
「さすが神聖女様、理解が早いわね」
「世間知らずだからって小馬鹿にしてるよね」
「いえいえ全然。神聖女様のおかげで、格段に強くなったんだから小馬鹿にするわけないでしょ?」
「私、魔法を防御する結界なら張り続けることができるんだよね」
「ごめんごめん。それをやられたら、たぶんあたしの魔法は無効化されて一方的にやられるから勘弁して」
「それにしても、このまま30階層まで行きそうな勢いだけど大丈夫なの?」
「無茶をするなら辞める予定だったから、まだまだ先に行く感じかも」
「大丈夫そうならいいんだけど」
30階層ぐらいから大規模な編成が必要って話だったから、あの快進撃を見ても心配が勝ってしまう。
みんなもそれは重々承知だと思うから、私がとやかく言う資格はないんだろうけど……。
でもたしかに、3人は軽々と次々にモンスターを斬り裂き、投げ飛ばし、ぶん殴っている。
表情に焦りはなく、動きに疲れを見せず、闘争心を輝かせ続けていて、ハンノも今のところ魔法をほとんど使っていない。
まさに余裕の攻略ということなんだとう、私もみんなを回復していないから余裕もある。
「でもさすがに、そろそろ休憩した方がいいんじゃない? 進むのか戻るのかも話を聞きたいし」
「それはそうね。じゃあ階層移動のときに話そう」
「私もそろそろ体を動かしたくなってきちゃったし」
「あたしは今の発言の方が心配になるけどね」
「神聖女の力が疼くってやつよ」
「何それ変なの」
ちょっと準備運動には軽いけど、腕をぐるぐる回したり手首をぷらぷらさせておこうかしらね。




