第11話『神聖女と契約した精霊は神獣へ!』
第2階層に辿り着いて、モンスターと遭遇するまで時間はかからなかった。
「う、嘘……」
「やっぱりね。でも本当にこうなるとは」
エドとラグの前に現れたのは、さっき戦った機敏な大きいモグラ4体。
あれぐらいだったら、あの子たちでも倒せそうだけど――それは攻撃する魔法を持っていたりすればのこと。
さすがに心配が勝って、私が先頭に介入しようと思ったけどリインに腕を掴まれて制止させられてしまった。
振り払おうにも力が強すぎて無理で、泣きついてでも手を放してもらおうと考えたけど――まさかのまかさなことが目の前で起き始めている。
『ガウワウ!』
『ぎゃうっ!』
エドとラグが巨大してしまった。
私たちの身長は優に超え、四足歩行なのに180センチ以上はあるかも。
もふもふには変わりないけど、犬より狼で猫よりも獅子と言った方がわかりやすい。
あ、どちらかというとフェンリルとライオンかも?
こちらの世界ではどう例えたらいいのかわからないけど、そんな感じ。
「ルミナと同じ白い毛で、神々しく見えるね」
「私は人間よ?」
「ルミナはそう思っているだろうし、実際にそうなんだろうけど。でもわたしたちからすれば、ルミナ自身が女神様にも見えてしまっているのよ」
「ええそうね。祈ったり願ったら奇跡が起きちゃうんだじゃないかって思えているわ」
ハンノがやっていることの方が、よっぽど奇跡に見えるけどね?
「おいおい、戦い方がド派手すぎるって」
サーレの言う通り、あのかわいらしい子たちとは思えないほど腕で薙ぎ倒したり爪で切り裂きまくってる。
しかも攻撃に使える精霊魔法なんてないと思っていたけど、白い炎を飛ばしたり尻尾を刃のようにしていたりもしていたり……何あれ凄い。
私たちは後を追って歩いているだけなのに、モンスターが常に視界へと入らず消えていく。
『ワオーンッ!』
『んにゃーっ!』
挙句の果てには、咆哮をあげるだけでモンスターが次々に消滅していく始末。
そして辺り一帯からモンスターが消滅すると。
『ヘッヘッヘッ』
『んなーおん』
「エド、ラグ、お疲れ様――!?」
でっかいもふもふが駆け寄ってきて、小さい体のままだと思っているのか巨大な体ですりすりしてくるものだから、私はもふもふともふもふの間に埋まってしまう。
ふかふかで気持ちがよく、これといって息苦しい感じもしないからただただ幸せな空間でしかない。
なんだかいい匂いもするし……はっ! こ、これが犬吸いと猫吸いというものなのね!?
撫でることもできず、もふもふふわふわに溺れているけど――これは、ありよりのあり!
「ぷはっ」
「ルミナ、大丈夫?」
「絶好調っ」
「それはなにより。で、わたしの予想は当たったわけだけど。これからどうするかね」
「さすがにこんな大きい姿で街中は歩けないものね」
かわいい事実は変わらないし私たちを傷つけない保証があるから大丈夫だけど。
見ず知らずの人からすれば、危害を加えてくる可能性があるわけだしね。
道を歩くにも幅があるから心配することは、地上に出たら次々に出てくると思う。
と、今後の心配をしていると。
「あらっ」
『ワンッ』
『んなあ』
変幻自在というわけね。
エドとラグは、ポンっと小さくなってしまった。
こんな簡単に小さくなったり大きくなれるのなら、今後に差し支えなさそう。
「凄い、の一言しか出てこないよ。まあ、これもそれも全部ルミナが基準となっているんだけど」
「え? そうなの?」
「ねえ、エド、ラグ。もう一度大きくなれる?」
次はボンッと大きくなり、変幻自在というよりも伸縮自在と言った方が合っているのかもしれない。
「ルミナだけじゃなく、わたしたちも乗せてもらえたりはするかな?」
『ガウウッ』
『ぎゃおん』
「たぶん許可してもらえたということでいい、かな」
「ええ大丈夫よ。私が許可するから」
と、エドに私とリイン、ラグにミィラ、サーレ、ハンノが乗った。
「ルミナには大変かもしれないけど。エド、ラグ、このまま20階層分突っ切ってもらってもいいかな」
『ワオォオオオオオン!』
『んがぁあああああっ!』
元気のよい返事と共に、エドとラグは走り出す。
当然、モンスターたちは視界に入ったと思えば次々に消滅していく。
走っているだけなのに消えていくから、たぶんオーラみたいなものを周りに展開しているのだと思う。
おかげで上に乗っている私たちも激しい揺れに振り落とされることはない。
「じゃあ話の続き。要は神聖女が強すぎて、契約した精霊も能力が底上げされまくっているってこと」
「そうなの?」
「基本的なことを交えての話ね。ちなみにルミナの凄さは、シルドフェルド領を封印していた事実を踏まえると。神の御業であり、女神の力をそのまま行使しているということでもあるのよ」
「女神様とお話をしたとき、たしかにいただいたかも」
「え、神託を得たとかではなく、直接女神様と言葉を交えたの?」
「うん。とても優しくて綺麗な女神様だったよ。人間界を憂いていて、『力を託すから世の中をよくしてちょうだい』ってお願いされたの」
「神託どころかお願いって――規格外って言うか常人離れしているというか、もはや女神様の分身体とでも言える存在のようね」
「まっさかぁ~、そんな大それた人間じゃないわよ。運がよかった、ただの人間よ」
「そんな簡単な言葉で片付いたら、わたしたちも頭を抱えなくて済むんだけど」
だって事実よ?
私は転生するときに女神様とお話しして、今の通りのお願いをされた。
力を授けるという話も事実だし。
あ、なるほど。
リインの話をそのままに理解するなら、女神様は私を分身体と見立てて力を授けてくださったのね。
だとしたら、周りの人たちが驚くのも無理はないし、シルドフェルド領の凄いらしい? ダンジョンを1人で封印していたという事実は、本当に神の御業だったのでしょう。
「だったら私って、もしかしたらとんでもなく凄かったり強い?」
「やっと理解できたようね」
走っているだけで、次々にモンスターが消滅していく光景を前に、自分の力が強すぎたせいでエドとラグも強くなりすぎた事実を受け入れるしかない。
大きくても小さくても、もふもふな精霊が仲間になったし、さらさらなお馬さんとも知り合えたし、いいことばかりしかないけど!
「あ、そうだ。私がこの街に来た理由を言ってなかったわね」
「そういえばそうだった。シルドフェルド領のダンジョンって大丈夫なの?」
「実は私、聖女マリナスに仕事を奪われ、量子まで唆されちゃったの。そして追放され、お馬さんに出会い、エドとラグと出会い、街に辿り着いてリインとも出会ったの」
「え」
「ん?」
「ダンジョンの封印は、その聖女マリナスって人が担っているということ?」
「そうなるね」
「ダンジョンの封印って、1回で何日分の効力があるの?」
「どうかしら。風邪をひいて1週間はダンジョンに向かえないときがあったけど、そのときは全然大丈夫だったから――それぐらいなら?」
それほどダンジョンが強力であるにもかかわらず、1週間も放置していたらマズかっただろうに怒られなかったな。
あのときは私以外にできる人も居なかっただろうし、領主もみんなも私を大事にしてくれているのが伝わっていた。
さすがにあのときを思い出すと、名残惜しい気持ちも湧き出てきてしまう。
「それなら、まあ……一旦は大丈夫かな」
「あの人だけで封印できないってことよね?」
「うん」
「でも大丈夫じゃない? さすがに他の聖女を呼び込むでしょ」
「どうだろうね。ルミナを追放した上に、領主はそのマリナスって人に唆されたって話でしょ?」
「うん。私の話に耳を傾ける様子すらなかったよ」
「あそこまで大きくなったシルドフェルド家が、愚かな選択をしなければいいけど。あ」
「あ? え、うわぁああああああああああああああああああああっ!」
体が大きくなったり精霊魔法が発動しているから、エドとラグは階層移動用の通路を勢いそのままに跳び降りてしまい、一気に内蔵が持ち上がる感覚に襲われて絶叫するしかなかった。




