死者の荷袋
前線の倉庫に、持ち主の戻らない荷袋が並んでいた。セイルは将軍ダリオから、遺品を軍の本部へ運ぶ順番を相談された。袋には軍用の装備だけでなく、家族の写真や手紙が入っている。搬送車に余裕がなく、全てを一度には送れない。
副官は身分の高い兵から先にすると言った。セイルは袋の大きさを確かめ、傷みやすい物を優先する案を示した。濡れた手紙は今夜の冷えで固まり、開けば破れる。まず乾燥室へ移し、写真は木箱に立てて運ぶ。家族が受け取るときの状態を考えると、順序は階級で決まらない。
袋の一つから、小さな木笛が見つかった。誰かの子供が削ったらしく、音階は不揃いだった。セイルは吹かなかった。持ち主の知らない人間が、勝手に思い出を音にしたくなかったからだ。
遺品係の若い兵が尋ねた。「全部返したら、もう戦が終わった気になりますか」セイルは首を振った。「返すほど、戻らない人が分かります」若者は箱の蓋をそっと閉めた。
箱詰めを手伝っていた兵が、亡くなった友人の袋を見つけて座り込んだ。セイルは仕事を代わり、彼を無理に立たせなかった。しばらくすると兵は立ち上がり、「これだけは俺が包みたい」と言った。自分の手で畳んだ布を箱へ入れ、封をした。早く終わらせることより、誰が送り出すかが大切な仕事もある。 箱の上には、友人の所属が正しく記された。
軍務院へ向かう荷車が出た後、倉庫には空の棚が残った。明日も同じような袋が届くかもしれない。セイルは受領した家族から返事が来るまで、送り状の控えを保存するよう頼んだ。失ったものを数える仕事を、早く終わらせるためではなかった。




