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《適正》の軍師――SSS級冒険者は、天才皇帝の侵攻に挑む  作者: 竜太郎


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皇妹の問い

皇妹エリスが兄の執務室へ来たとき、レオンハルトは軍費の表を読んでいた。エリスは机に置かれた王国の地図を見て、「この人たちはいつ帝国の人になるの」と尋ねた。皇帝は答えに詰まった。領土を占めれば帝国の法が及ぶ。だが住民が自分を帝国人と思うまでには、法とは別の時間がいる。


「私たちの旗を掲げれば、皆が喜びますか」エリスは真剣だった。レオンハルトは高台の報告を見せた。帝国旗が上がった場所では、村人が二日間家から出なかったという。恐れている人にとって、旗は喜びの印ではない。


エリスは「だったら戦をやめればいい」と言った。皇帝は簡単には頷かなかった。兵は既に川を渡り、双方で死者が出ている。戻る命令もまた責任を伴う。それに、帝国が抱えた税と交易の問題は消えていない。始めた戦が正しいかどうかと、終わらせる条件は同じではなかった。


「兄上は勝った後のことを考えているのですね」とエリスが言った。「勝たずに終わることも考えなければならぬ」と彼は答えた。その言葉を口にした自分が、何を選べるのか確信はない。


エリスは地図の村へ、小さな紙の人形を三つ置いた。「これは誰」と兄が尋ねると、「ここに住んでいる人」と答えた。地図では村の印は点ほどしかない。レオンハルトは人形を取り除かず、そのまま会議が終わるまで置いておいた。


エリスが去ると、皇帝は前線へ送る命令を書き直した。占領地の学校を軍の物資倉庫に変える案を中止する。兵の寝床は別に探させた。エリスの問いが直接命令になったわけではない。しかし子供が通う場所を残す理由を、改めて言葉にした。

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