↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
《適正》の軍師――SSS級冒険者は、天才皇帝の侵攻に挑む  作者: 竜太郎


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
9/216

砦から来た靴

国境軍の先遣隊が帝都に戻ると、皇帝レオンハルトは戦果の旗より先に兵の靴を集めさせた。泥の付き方を見るためである。浅瀬を渡った兵の踵は片側だけ削れ、革底には細かい砂が入り込んでいた。地図上では緩やかな傾斜なのに、現地では斜めの流れが足を押していた。


工兵長は、橋板を厚くすればよいと報告した。皇帝は靴の底を指でなぞり、「木を増やすだけでは馬が踏み外す」と言った。水の流れを弱めるため、上流に砂袋を置く案が出されたが、魚の遡上を止めれば流域の漁村が困る。


そこで工兵は、季節ごとに外せる杭列を試すことになった。完成は遅れる。それでも橋を焼く案に戻る者はいなかった。皇帝は理由を毎回繰り返さず、必要な資材の確保だけを命じた。


リディアは王国の政務について新たな報告を持ってきた。国王は軍の招集を進める一方、河畔の農民に麦の持ち出しを許したという。「戦場を空にして迎えるつもりでしょう」


「それでよい。王国の民が逃げれば、我が軍は彼らを食わせずに済む。問題は残った家畜と井戸だ」


クラウスは占領地の食糧徴発を進言した。皇帝は軍票による買い上げを原則とし、違反を記録する監察官を随伴させる命令を出した。戦場で命令通りに動かぬ者が出ることも承知している。そのための帳簿だった。


靴底の革を受け取った兵の一人が、新品よりも古い靴を直したいと言った。足に馴染んでいるからだ。皇帝は新品の支給だけを成果に数えていた軍需官へ、修理数も報告させた。使い慣れた物の価値は数量表に載りにくい。


夕方、靴は持ち主に返された。兵たちは皇帝が何を見たのか知らない。ただ翌日には、片減りした靴底を直す革が届いた。前線への道は、少しずつ変わっていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。