畑を渡る順番
国境沿いの村では、避難の荷車が細い畦道に並んでいた。牛を先に出す家、種麦を抱く家、寝たきりの祖父を戸板に乗せる家。誰もが急いでいるため、十字路で車輪が噛み合い、半刻も動けなくなっていた。セイルは村長に挨拶し、詰まった車列の後ろへ歩いた。
「荷が軽い順に出してください」彼が言うと、村長は首を傾げた。重い車から送り出さなければ夜になる。だがセイルは、先頭の軽い荷車を脇道から動かし、交差点に小さな空白を作った。そこへ重い車の鼻先を振り向けると、一台ずつ角を曲がれた。
避難の順番を巡って、二軒の家が言い争った。どちらにも病人がいた。セイルは優先を決めず、馬を持つ家へ二往復を頼み、待つ側には湯を沸かす場所を確保した。選択肢を一つ増やすと、争う必要がなくなった。
村外れには収穫前の豆畑が残っていた。持ち主の女性は畑を見たまま動かなかった。セイルが声を掛けると、「種を失えば来年はない」と答えた。彼は手近な袋を借り、豆の乾いた莢だけを集める方法を教えた。全ては救えない。それでも種は馬一頭で運べる量になった。
軍の将校は彼を不思議そうに見ていた。王都から来た臨時参与が、敵軍の進路より畑の袋を気にしている。「兵の邪魔になります」と将校は言った。セイルは道の端へ避難民を寄せる段取りを示し、「兵もこの道を使えます」と返した。
列の最後にいた老女は、家から持ち出した柿の枝を離さなかった。実はまだ青い。セイルが理由を聞くと、夫の墓の脇に挿すつもりだと答えた。彼は荷車の空いた隅へ枝を固定した。
夕方、最後の車が村を出た。道に残ったのは、家畜の足跡と落ちた豆の莢だけだった。セイルは振り返り、戸の閉まった家々を数えた。戻れる日が来るかどうかは、まだ誰にも分からなかった。




