白布を二枚
王国の救護所に、両軍の負傷兵を運ぶための白布が足りなくなった。セイルが補給係に尋ねると、白布は降伏旗の材料として別の倉庫に保管されているという。必要な部署が違うだけで、布は同じだった。軍則を変える権限のないセイルは、ダリオへ事情を話した。
将軍は白布を二枚だけ貸すことを認めた。一枚は患者の担架へ、一枚は敵方の救護兵に合図するため。だが規則を守ろうとする衛兵が倉庫の鍵を渡さず、時間がかかった。セイルは怒らなかった。鍵を持つ兵は不正を防ぐため配置されている。その任務を無視すれば、次は必要な医薬品が盗まれるかもしれない。
負傷兵の一人は、炎術に焼かれた腕を抱えていた。王国の術者が味方の位置を誤ったらしい。セイルは射場で風向きを測らせた日のことを思い出す。注意を重ねても事故は起こる。彼にできたのは、火傷をした兵を運ぶ角度を変え、腕へ布が触れないようにすることだった。
夜になり、白布の一枚が血で染まった。洗えば再び使えるが、落ちない色もある。救護係は布の片隅に縫い目を入れ、汚れのない裏面を患者へ向けた。
倉庫番は貸し出した白布が戻らないことを心配した。救護係は洗浄の予定を書面にしたが、戦場の布は傷んで返せないこともある。セイルは返却不能なら廃棄の理由を記録するよう提案した。帳簿の数字を合わせるために、汚れた布を患者へ戻すのは本末転倒だった。
セイルは倉庫から貸し出された記録を確認した。翌日、補充の布が届くまで、同じ物を別の場所で必要とする人がいる。彼は余った紐を救護係へ渡し、二枚を風で飛ばされないよう繋いだ。




