↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
《適正》の軍師――SSS級冒険者は、天才皇帝の侵攻に挑む  作者: 竜太郎


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
81/228

折れた槍の持ち主

王国の訓練場へ、長槍を得意とする古参兵がセイルを呼んだ。噂の《適正》を試すつもりで、初めて触れる長さの槍を渡す。セイルは石突きを地面に置かず、重心を確かめた。古参兵が半歩踏み出すと、槍先は最短の角度で脇へ滑り、相手の手首に触れた。


「型を学んだのか」と兵は聞いた。「いえ。今の距離なら、そこが届きました」次の打ち合いではセイルが押された。槍の柄に古い亀裂があり、無理に受ければ折れていたからだ。彼は武器を手放して間合いを切った。古参兵は勝ったと思いかけ、柄の割れ目を見て言葉を失った。


折れた槍は古参兵の父から譲られたものだった。修理しながら使い続け、柄の芯が痩せているのを見逃していた。セイルは「替えた方がよい」と告げたが、兵は黙ったまま槍の先端を撫でた。道具には思い出がある。


二人は工房へ行き、穂先を新しい柄へ移した。古い柄は短く切り、訓練用の棒にする。父の槍が全く同じ姿で残るわけではない。それでも握り跡のある部分は消えなかった。


工房の職人は古い柄を燃やしてしまえばと軽く言った。古参兵が何も言わずに手を止めたのを見て、セイルは柄の節を残せないか尋ねた。職人は考え直し、手のひらほどの短い棒を切り出した。兵はそれを腰の袋へしまった。 手の中の棒は軽くなった。だが忘れたくない重さは残っていた。セイルはそのことを口にしなかった。


帰り道、古参兵はセイルへ尋ねた。「最善が見えるなら、悔しいことはないのか」セイルは手のひらにできた小さな擦り傷を見た。「見えたものを選べないことはあります」古参兵はそれ以上聞かなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。