灰環島のものさし
王国軍の若い測量兵が、セイルの身長を棒で測ろうとして笑われた。成人の肩幅から橋の幅を推定する訓練をしていたが、彼は誰よりも歩幅が短かった。測量兵は「SSS級でも歩き方は普通ですね」と言った。セイルは、雨上がりの石を踏むときに歩幅が変わることを見せた。
彼は十歳で島へ運ばれたとき、潮の満ち引きを知らなかった。初めて浜を歩き、同じ岩を夕方に越えようとしたら水が腰まで来ていた。潮の周期を覚える前に必要だったのは、濡れた岩へどの角度で足を置くかという小さな判断だった。
測量兵は島の地図を描いてほしいと頼んだ。セイルは紙の端に、かつて暮らした崖と入り江を描いた。だが思い出せない沢もある。年月が経てば岩は崩れ、風が砂を運ぶ。「これは私が出た頃の形です。今も同じとは限りません」と書き添えた。
若い兵は地図を眺め、「十年もいたら全部覚えると思っていました」と言った。セイルは笑った。島の夜は毎回違った。暗闇でも歩ける道を作るより、歩かない方がよい夜を見分けることが大切だった。
測量兵は島の地図に方位を付けようとしたが、セイルは記憶していない地点へ勝手に線を足すのを止めた。「空いているところは空けてください」若者はうなずき、白い部分を残した。未知を隠さない地図が、これから歩く人には必要だった。 紙の上に、知らない土地を示す白が残った。
夕方、二人は丘の坂の距離を測り直した。測量兵の定規は正確で、セイルの歩幅は斜面ごとに変わる。役立つのは片方ではなく、二つの違いを記録することだった。若者は訓練帳に初めて、自分が間違えた距離を残した。




