進まない戦車
帝国軍の重装馬車が浅瀬の向こうで立ち往生した。石弾を運ぶため車体を補強したが、その重さで地盤へ車輪が沈んでいた。皇帝レオンハルトのもとに、工兵が上流の樹木を伐って枕木にする計画を出した。数十本を切れば車を動かせる。しかし樹木は丘の集落が冬に風除けにしている林だった。
レオンハルトは車の用途を確かめた。次の丘を攻めるための石弾はまだ必要ない。攻勢の日取りさえ決まっていないのに、輸送計画が先に重くなっていた。皇帝は荷の半分を下ろさせ、車両を二回に分けて運ぶよう命じた。
クラウスは兵の疲労を心配した。皇帝も知っている。だが砲弾を全て一度に運ぼうとして道を壊せば、食料も薬も同じ場所で止まる。「重いものを捨てるのではない。重さを分ける」彼の返答に将軍は渋々頷いた。
伐採を命じられていた工兵たちは、斧を研ぎ終えていた。中止の報せに落胆する者もいた。仕事を失ったように感じたのだろう。彼らには車輪を引き上げる滑車を作る仕事が与えられた。木を切らなくても、木を扱う技能は使える。
橋材の運搬を担当した兵は、二往復の行程に不満を漏らした。皇帝は作業の休憩を増やすよう命じ、輸送中の事故数も比べさせた。二度通れば危険も二度になる。荷を減らす利点が、移動回数の不利益を上回るかを確認したかった。 車輪を引き上げた兵は、泥の中に落とした金具を翌朝拾いに来た。小さな金具でも、次の車には必要になる。
日暮れ、車体は泥から抜けた。車輪の跡は深く残り、翌朝の雨で水溜まりになった。レオンハルトはそこに小さな杭を立てるよう命じた。自分たちが作った危険を、次に通る隊へ隠さないためだった。




