少し遅い斥候
王国軍の巡回路が変わったとの報告を、レオンハルトは昼の食事中に受けた。報告を届けた斥候は、通常より半刻遅れている。クラウスは怠慢を疑ったが、斥候は河岸の葦原に新しい水路ができていたと説明した。暗い中で馬を進めれば、部隊ごと泥へ沈んでいた可能性がある。
皇帝は遅れた半刻を咎めず、記録に残させた。しかし報告の内容がすべて正しいとも決めなかった。斥候一人が見た水路は、昨夜の雨だけでできたものかもしれない。昼に別の二人を送り、川を渡らずに見える範囲だけを確かめさせた。
リディアは対岸の相談役セイルの移動も知らせた。ギルドの一団とともに丘の後方へ行ったという。「軍から離れましたか」とクラウスが尋ねる。「離れたのではない。あの男は初めから軍に属し切っておらぬ」と皇帝は答えた。
同じ日に、帝国の食糧隊から羊の病気が見つかったとの報告が来た。前線に送る予定の群れを止めれば肉が足りない。皇帝は羊飼いの判断を優先し、病気の疑いがある群れを別の牧場へ移すよう命じた。軍が急いでも病は急いで治らない。
羊の群れを隔離する牧場は、軍馬の水飲み場と重なっていた。レオンハルトは別の柵を使うよう命じ、移動に要る人手を兵站局へ割り当てた。馬を守るための措置が羊を弱らせてはならない。二種類の家畜の世話人が、珍しく同じ机で場所を決めた。 きのうの遅れが、明日の命を支える。
夕方、二人目の斥候が水路の位置を確かめて帰った。初めの報告に誤りはなかった。レオンハルトは遅延の理由を知り、改めて馬を休ませる日程を整えた。必要な遅れと怠慢を見分けるのも、皇帝の仕事だった。




