鉱山からの使者
帝都に北部鉱山の代表が来た。採掘量の落ちた坑道へ新たな税が課され、抗議のため組合の長が冬山を越えてきたのだ。皇帝レオンハルトは会う前に、坑夫の負傷記録を取り寄せた。事故は減っていないのに、生産の報告だけが上向いている。鉱山監督官が古い鉱石の備蓄を新しい産出として数えていた。
「掘れない山から鉄を取り立てるつもりはない」と皇帝は言った。代表は安堵しなかった。税を軽くしても、坑道の支柱が朽ちている。若い坑夫が軍へ取られ、修繕する手が足りないからだ。そこで皇帝は採鉱税を期限付きで下げる代わりに、坑道修繕の作業日数を組合に報告させた。
リディアは財政への痛手を示した。今月の軍用鉄材は足りるが、春には鍛冶場が忙しくなる。「一つの穴を塞げば別の穴が開きます」と彼女は言った。レオンハルトは帳簿に複数の不足を書き並べた。全部を同時に消すことはできない。
代表は去り際、坑夫たちが皇帝の開戦をどう見ているか尋ねられた。「戦に勝っても山は深くなりません」と答えた。無礼な言葉だったが、レオンハルトは怒らなかった。それこそ確かな見通しだった。
代表は旅の途中、凍った井戸から水を汲めず馬を一頭失っていた。皇帝は帰路に使える宿場を案内させたが、失った馬の補償は約束しなかった。鉱山の訴えが正しくても、旅の全てを国家が肩代わりできるわけではない。代表もその違いは理解していた。
夜の軍議でクラウスが増援の鉄量を求めた。皇帝は必要数を削らず、納期だけを延ばした。前線の武器と地中の支柱は、どちらも鉄を食う。帝国には帝国の足元があった。




