河岸の三日目
帝国皇帝レオンハルトは攻撃の朝、橋頭堡の土を手に取った。三日間の準備で乾かしたはずの地面は、まだ指の間で粘る。工兵長は問題ないと答えたが、皇帝は予備の板を増やすよう命じた。歩兵が進めても、負傷者を運ぶ車が戻れなければ意味がない。
クラウスは左翼の部隊を先に渡す案を示した。敵の守備は散っており、局所で兵数を上回れば足場を取れる。皇帝は許可し、同時に右岸の弓兵へ支援射撃を命じた。ただし村の屋根が見える方角には撃たせない。
最初の兵が渡り始めると、王国側から矢が飛んできた。盾を上げた歩兵が橋板の上で詰まり、後ろの兵が前へ押される。帝国軍は前へ進むため、板をもう一列敷いた。工兵は弓矢の届く距離まで走り、盾の影で釘を打った。
皇帝は望楼で、兵が死んでいく様子を見ていた。戦を始めたのは自分だ。橋を渡る兵にとって、国境線の意味は遠い。目の前の矢を防ぎ、足場を確かめることだけがある。
昼前、帝国の先頭隊が対岸の浅い高台へ達した。旗が一本立つ。クラウスは前進を促したが、皇帝はそこで一度止めさせた。予備の橋板と救護隊が追いついていない。
先頭の工兵は釘を一本落とし、拾いに戻ろうとした。後ろの兵が腕を掴んで止めた。矢が飛ぶ場所で一本を探すより、予備から出せばよい。皇帝は報告でその小さな判断を知り、工兵隊に予備品を増やす命令を出した。戦場で迷わず捨てられる物も必要だった。
対岸からはまだ王国軍の矢が来る。小さな高台を得た代わりに、負傷者が増えた。皇帝は旗を見上げても笑わなかった。川を渡るには一日で足りるかもしれない。だが兵を帰す道を作るには、もっと長い時間がいる。




