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《適正》の軍師――SSS級冒険者は、天才皇帝の侵攻に挑む  作者: 竜太郎


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港に積まれた塩

王国南部の港では、塩の袋が普段の二倍の速さで倉庫へ運ばれていた。セイルが訪れると、荷運びの少年が足を挫いて座り込んでいた。倉庫の主人は怒鳴っていたが、荷役を休ませると夕方の潮に間に合わないという。セイルは少年を日陰へ運び、荷車の車軸を見せてほしいと頼んだ。


荷車は袋を高く積める代わりに、港の石段で大きく傾く。セイルは袋を二段減らし、車輪の間隔を木片で調整した。往復の荷量は減ったのに、転倒せず回れるため、荷役の列はかえって速く進んだ。主人は褒め言葉の代わりに、少年の休みを認めた。


港の酒場では宣戦の噂が膨らんでいた。帝国軍が三十万いる、王国の砦はすでに落ちた、港の船が徴発される。どれもまだ確かな話ではない。セイルは店の隅で、水を入れた椀に浮く木屑を眺めていた。潮の向きが変わる時刻を知るためだった。


「戦が始まれば、あなたの札が必要になります」とミレーネの使いが手紙を差し出した。ギルドは独立組織だ。国王の召集状ではない。それでも王国の冒険者を守るため、王都へ戻ってほしいとある。


セイルは返事を書く前に、港の治療師へ少年を預けた。倉庫の主人には、石段の欠けた部分へ白い印を付けておくよう頼んだ。荷車は明日も通るからだ。


潮の引いた岸には、荷を積み損ねた魚籠が残っていた。漁師の娘が一つずつ拾い集めている。セイルは拾うのを手伝い、最後の籠を舟の陰へ置いた。娘は遠い戦の噂より、明朝魚を入れる籠の数を気にしていた。


夜明けの船で王都へ向かうと決めたとき、港では塩袋の山に布が掛けられていた。海風が吹くたびに布が持ち上がり、下の白い袋がちらりとのぞく。王国の暮らしは、まだ日々の仕事で支えられていた。

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