白い包帯
帝国の野戦病院を視察した皇帝レオンハルトは、寝台に並ぶ兵の顔を一人ずつ見た。敵の矢で肩を射抜かれた者、橋材に指を挟まれた者、夜の見張りで凍えた者。戦場で負う傷は、刃から生まれるものばかりではない。軍医は、感染を防ぐための清潔な布が不足していると訴えた。
軍務院の備蓄には包帯がある。だが王国との国境へ運ぶより、武器の輸送が優先されていた。皇帝は荷車の割り当てを見直し、医薬品用の小車を各隊に持たせることを決めた。速度の遅い大馬車を待たず、負傷した日に布が届くようにするためだ。
寝台の端で、若い兵が母親への手紙を握っていた。文字が滲み、紙の端が折れている。皇帝は名前を聞いた。兵はかすれた声で答え、自分の隊がいつ川を渡るかを尋ねた。
「休め。お前の隊はお前を置いて進まぬよう、隊長に伝える」
軍医は後で、全隊を待たせるわけにはいかないと告げた。皇帝も分かっている。そこで負傷者が戻ったとき、元の隊へ合流できる記録を整えるよう命じた。約束を守る方法を、今から作らなければならない。
病院を出ると、クラウスから新たな攻撃案が示された。冬の前に一度、王国の河岸守備を押すという。皇帝は兵力と帰還路を確認し、強行ではない限定的な攻勢だけを認めた。
町長は税の掲示を出した翌日、誤字の指摘を受けた。薬代の額が一桁違っていたのだ。セイルは掲示をすぐ直させ、訂正前の紙も残した。誤りを隠すより、どう直したか分かる方が、町の人は次の数字を信じられる。
夜、書記官が病院の兵の名を届けた。皇帝は小さな紙へ記して机に置いた。作戦図の矢印が動くたび、そこには名を持つ人間が立っている。




