税の届く先
王国の後方町では、避難民を受け入れるための臨時税が議論されていた。町長は一律に銀貨を徴収したいと言い、商人は反対した。店を閉じた者にも同じ額を求めれば、立ち行かなくなる。セイルは町長の机に置かれた名簿を見た。名前の横に、店の種類だけが記されていた。
「収入が減っている家を分けられますか」と尋ねると、役人は面倒そうな顔をした。けれど市場の帳場にある売上記録を使えば、おおよその変化は分かる。納税の基準を店の大きさではなく、直近の取引量に合わせる案が出た。
商人たちは完全には納得しなかった。記録を見せたくない者もいる。そこで町長は、一定額までの免除と、希望する者だけ収支を示して減税を求められる仕組みを採った。誰もが公平だと感じる制度ではないが、食べ物を買えなくなる家は減る。
セイルは税の使い道も掲示してほしいと頼んだ。避難民の宿代、共同炊事の薪、井戸の修理、病人の薬。必要なものが見えれば、払う側も何を支えるか分かる。
夕方、靴職人の夫婦が役所を訪れた。税は払えるが、軍からの注文が急増しているため、弟子を一人雇いたいという。町長は避難してきた若者を紹介することにした。仕事のある町なら、人は長く暮らせる。
補給官は乾いた草を集めるため、農家に交渉へ出た。皇帝は代金を払うだけでなく、家畜用の分を残すことを命じた。兵の足を温める草を取った結果、村の牛が冬を越せなければ、来春の耕作が止まる。小さな物資ほど用途が重なりやすかった。
セイルは名簿に小さく印を付けた。戦の費用は軍の帳簿だけに載るのではない。遠い町の税にも現れる。その金が誰の朝を支えるかまで、確かめる必要があった。




