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《適正》の軍師――SSS級冒険者は、天才皇帝の侵攻に挑む  作者: 竜太郎


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試すための騎馬

帝国皇帝レオンハルトは、王国軍の連絡速度を知りたいと考えていた。正面から攻めても、敵は少しずつ配置を変える。何日で命令が届くか分かれば、攻める側の手順も立てられる。皇帝は少数の騎馬隊に、北の廃道へ姿だけ見せて戻るよう命じた。


クラウスは攻撃せずに帰ることを惜しんだ。しかし今回の目的は占領ではない。敵が廃道を守ろうと動けば、その知らせがどの部隊へ届くか見る。動かなければ、道を使えないと知っているのかもしれない。


騎馬隊は指定された丘に現れ、日の高さが変わる前に姿を消した。王国軍は追わなかった。代わりに遠くの砦で一枚だけ旗が上がった。夕方までに別の見張り台でも旗が上がり、王国側の馬車は廃道へ近づかなくなった。


「情報は伝わったようですな」とクラウスが言った。


「伝わったのは何だろう。騎馬が来たことか、騎馬を追う必要がないことか」


皇帝は両方の可能性を残した。廃道には昨年の崩落跡がある。王国軍が動かなかったのは、敵の意図を読んだからかもしれず、そもそも通れない道だと知っていたからかもしれない。


その夜、戻った騎馬隊の馬が一頭、熱を出した。皇帝は実験の報告を受け取ったあと、馬医の記録にも目を通した。必要のない損耗を出したくなかったが、試す以上は負担がある。


試験の結果を知らせる書類に、皇帝は「敵は反応した」とだけ書くことを禁じた。どの地点で、何刻後に、誰が何を見たのか。それがなければ次の軍議で勝手な解釈が生まれる。分からない部分を分からないまま残すのは、臆病ではなく手続きだった。


得られたのは小さな情報だけだった。皇帝はそれを勝利と呼ばず、翌日の測量に使う一項目として帳簿へ移した。

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