↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
《適正》の軍師――SSS級冒険者は、天才皇帝の侵攻に挑む  作者: 竜太郎


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
36/192

渡さない地図

帝国皇帝レオンハルトは、王国の国境地図を裏で売ろうとする商人を捕らえさせた。商人は古い測量図を持ち、城門の位置や井戸の数を記していた。買えば役立つかもしれない。だが出所を確かめると、王国の役所で働いていた者が借金のため持ち出した図面らしい。


クラウスは買い取るべきだと言った。敵の情報は貴重だ。皇帝は紙を広げ、折り目にある湿気の染みを見た。王国の洪水以前の地図で、支流が今の位置と違う。古い図面を信用して兵を進めれば、危険が増す。


「情報の価値は、秘密かどうかではない。正しいかどうかだ」


商人には法に基づく取り調べを受けさせ、図面を軍の測量官へ渡した。古い河道を知る資料としては使えるが、現在の進軍路には使わない。皇帝はそう記した札を付けさせた。


リディアは別に、王国で避難民の受け入れに使われた空き家の記録を示した。城下の役所が持ち主ごとに鍵の扱いを記しているという。戦の準備に追われながら、民の財産を帳簿へ残す手間を惜しんでいない。


「王国は混乱していない、と見るべきでしょうか」


「混乱しているから、記録が要るのだろう」


皇帝は地図の上へ重ねられた小さな紙を整えた。こちらの軍も完璧ではない。伝令が迷い、橋の工事が遅れ、食糧が湿る。その一つ一つを消す仕事に、敵もまた時間を費やしている。


古い地図を売ろうとした商人は、自分が騙されたのだと弁解した。皇帝はその言葉も調書へ残すよう命じた。真実かどうかは別だ。罪を調べるとき、都合のよい部分だけを記録すれば、やがて軍も同じ誤りを犯すようになる。


夜、帳簿係が鍵の話を持ち帰った。帝国にも空き家はある。戦の向こうにある町を統治するなら、今から学べることがあった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。