分けられた席
本営の食堂では、将校と一般兵の食事が別の時刻に分けられていた。炊事場が狭いことと、階級の慣習によるものだった。セイルは列の最後で待ち、鍋に残った薄い麦粥を受け取った。兵たちはSSS級の冒険者が同じ皿を使うことに戸惑った。
「上の者には肉が出ます」と若い兵が教えた。セイルは肉の有無ではなく、粥の温度を確かめた。早い時刻に食べる者は温かく、遅い者は冷めている。夜警に出る兵が最後になるなら、身体を温める機会を失う。
彼は炊事係に、食べる時間ではなく任務の開始時刻で鍋を分けるよう提案した。夜警用の小鍋を残し、熱い湯を足すだけでよい。将校の食事を奪う必要はない。
副官は規律が乱れると反対した。セイルはその考えを否定せず、食堂で騒ぎが起こらないよう、皿の受け取り口を増やすだけにした。翌日には列が短くなり、見張りに遅れる兵が減った。
食後、古参の兵がセイルに話し掛けた。「あんたは偉い人に見えん」
「そうですか」
「でも偉い人は、みんなが何を食べているか知るべきなんだろうな」
セイルは空の皿を返し、片付けを手伝った。軍の決定を下すのは将軍だ。けれど将軍に届く情報は、必ず誰かが拾わなければならない。
食堂の炊事係は、夜警用の鍋を使った翌朝、洗う人手が足りないと訴えた。セイルは使った兵が交代で洗うことを提案し、将軍の許可を得た。便利な仕組みも、後片付けを誰か一人に押しつければ続かない。兵たちは鍋底をこすりながら笑い合った。
夜警へ出る兵が温かい粥をすすったころ、本営の外では風が強まっていた。台所の小さな変更は、軍議の大きな地図には記されなかった。




