王冠と領地の境
帝国の評議会で、戦後の占領地を誰が治めるかという議論が持ち上がった。貴族たちは王国から得た土地を褒賞として配分する案を出した。レオンハルトはまだ戦争が終わっていないことを指摘し、目の前の関所と砂州ですら管理の仕事が山積みだと話した。
ある侯爵は国境の山林を自分の家が管理すれば、軍の負担が減ると申し出た。しかし彼の領地は帝都から遠く、山の住民と話す人材もいない。皇帝は代官候補の名前を尋ね、侯爵が答えられないのを見て、配分の議論を保留した。
リディアは占領地で生じた税の扱いを説明した。軍が物資を徴発している間に民税まで取れば、住民は二重に負担する。レオンハルトは軍費と地方税を分け、戦時の負担を記録する役所を小さく置く案を採った。土地を得ることと、そこに暮らす人々の信用を得ることは同じではない。
会議の後、侯爵は皇帝へ「勝ってから決めても遅い」と言った。レオンハルトは準備の必要を認めながら、準備と約束を分けるよう求めた。まだ奪っていない村を他人の褒賞として語れば、その村で生きる人間が見えなくなる。
占領地で使われる秤の目盛りが、帝都の標準と違うという報告もあった。徴税官は帝国式に替えることを求めたが、現地の商人は旧い秤を使い続けている。皇帝は換算表を用意させ、突然の変更を禁じた。秤の違いを理由に罰金を取れば、占領したばかりの村は交易の場を失う。
夜、皇帝は新しい領地図を広げなかった。代わりに関所から届いた羊の通行簿を読み、住民が去年と同じ夏の牧草地へ行けているか確かめた。王冠に重なる土地の線が増えるほど、そこで歩く人の道を知らねばならなかった。




