↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
《適正》の軍師――SSS級冒険者は、天才皇帝の侵攻に挑む  作者: 竜太郎


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
231/240

折れた矢の行方

王国の丘で、帝国側から飛んできた矢が一本だけ見つかった。誰も傷つかなかったが、兵たちは攻撃の前触れだと騒いだ。セイルは矢の羽根が濡れ、軸が途中で折れているのを見た。射られたものか、川を流れたものかさえ分からない。


弓兵隊長は仕返しの一射を求めた。セイルは「誰へ射るのですか」と尋ねた。対岸の見張り台へ届く距離ではなく、撃てば砂州の水際に落ちるだけだった。隊長はしばらく黙り、矢を持って射線を測ることに同意した。


川上の古い訓練場では、放たれた矢を拾えないことがあると猟師が教えた。増水した川が軸だけ運び、岸に引っかけるのだ。セイルは矢の材と羽根の切り方を記録したが、所属を断定しなかった。王国で使う矢にも似たものがある。


午後、対岸では帝国軍が補強工事を続けた。こちらの兵は矢を構えたまま待ち、結局何も起こらなかった。緊張した肩を解くようセイルが告げると、若い兵が息を大きく吐いた。戦いの気配がある日ほど、何も起こらない時間を耐えるのは難しい。


矢の材を調べた弓職人は、矢羽が片側だけ擦り切れていることに気づいた。舟の板に挟まれた痕かもしれない。セイルはその見立てを記録に加えたが、矢の行方を追うために民間の漁を止めることはしなかった。証拠を求めてすべてを閉じれば、戦場の周辺にいる人の仕事が滞る。調査には調査の限度があった。


日暮れ、折れた矢は倉庫へ収められた。調査が終われば廃棄するか、教材にするか決めるという。セイルは保管札に「飛来経路不明」と記した。一つの矢が戦を始める口実にもなり得るからこそ、知らないことを知っているふりはしなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。