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《適正》の軍師――SSS級冒険者は、天才皇帝の侵攻に挑む  作者: 竜太郎


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引き返した二人

王国の斥候二人が、夜の巡回から予定より早く戻った。任務を放棄したのではないかと疑われたが、二人は川辺の草の中で帝国の罠を見つけたと説明した。セイルは現地の地図を広げ、罠の位置と通ってきた道を聞いた。二人は草の揺れだけを頼りに判断したという。


隊長は証拠がなければ報告できないと怒った。セイルは一緒に現地へ行く許可を求めたが、夜明けまで待つよう止められた。日が出ると草の隙間に細い縄があり、足首ほどの高さで張られていた。縄の先には警報用の金具が結ばれていた。殺傷の罠ではないが、踏めば居場所を知られる。


二人は怖くなって帰ったと認めた。セイルは恐怖を恥じる必要はないと言ったが、同じ道を次も使うなら別の観測方法が必要だと話した。隊長は罠のある場所へ兵を増やさず、遠回りの巡回路を選んだ。


昼、隊に新しい道を教えた斥候の一人が、戻る判断は相棒がしたと打ち明けた。自分は進むべきだと言い張っていたらしい。セイルは二人へ、意見が割れたとき何を確かめたか書き残してほしいと頼んだ。一人の勇気より、二人が同じ場所へ戻れた理由を知りたかった。


縄の先の金具は、風だけでも鳴るほど軽かった。斥候が近づくと音は出ず、枝が擦れると鳴る。セイルは罠が完全なものではないと知ったが、だから無害とも考えなかった。隊長は音の届く場所を歩いて確かめ、見張りを置く位置を変えた。


夕刻、敵の警報金具は触らずに残された。帝国兵が点検へ来るかもしれない。セイルは見張りを置いたが、捕らえるための待ち伏せはしなかった。川岸で敵がまた歩くことも、こちらが別の道を選ぶことも、今夜の地図にはまだ余白として残っていた。

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