王国の小さな勝利
レオンハルトは王国軍が砂州の東側で帝国の見張りを一組追い返したと知った。攻撃した人数は少なく、追撃もなかった。クラウスはすぐ報復すべきだと述べたが、皇帝は見張りがなぜ孤立したかを調べさせた。川辺の草が伸び、互いの姿を見失っていたという。
サビーネは退却時に負傷した兵を無事に連れ戻していた。皇帝は彼女を責めず、見張りの間隔を見直すよう命じた。小さな敗北を隠せば大きな敗北につながる。王国側がこちらの弱い場所を確かめたことも、認めねばならなかった。
クラウスは王国の攻撃が臨時参与セイルの考えだと推測した。レオンハルトは報告にその名がないことを指摘した。相手が強い判断をしたからといって、すべて一人の人物へ帰すのは危険だ。敵軍の隊長が現地で良い判断をした可能性もある。
見張りを追い返された場所では、帝国兵が折れた槍の柄を拾った。王国側のものだった。サビーネはそれを戦利品として飾らず、材質を調べさせた。水辺では乾いた木の強さが保てない。自軍の槍にも同じ傷が出る恐れがあった。
追い返された見張りの一人は、王国兵の足音を聞いてから槍を構えるまでに時間がかかったと話した。濡れた手が柄を滑ったからだ。皇帝は彼を臆病とせず、革の巻き方を調べさせた。現場で起きた遅れを気合で埋めるのは容易いが、次の雨でも同じことになる。サビーネは槍の握りへ乾いた麻を巻く試験を始めた。
皇帝は戦果表に、砂州の東端を一時失ったと記させた。ただし補給路と主要な舟着き場は保持されている。勝敗を飾らぬ記録があれば、兵を無駄に増やすことも避けられる。レオンハルトは地図へ小さな修正を加え、報復ではなく観測位置の変更を命じた。




