サビーネの上申
サビーネは砂州守備隊を三日ごとに交代させる案を皇帝へ送った。今の配置では兵が水辺の湿気で足を痛め、川岸に立てる人数が減っている。クラウスは占領地を守り切る意思が弱いと評したが、レオンハルトは足の診察記録を読み、交代の必要を認めた。
サビーネは別の問題も書いていた。砂州の東端は見通しが悪く、少人数の巡回では王国の木柵を十分に監視できない。兵を増やせば病人も増える。皇帝は休養部隊を後方へ下げる一方、見張りの位置を高い岩場へ移すことを検討させた。
工兵は岩場に足場を組み、観測孔を作れると答えた。しかし工事中は王国側から姿が見える。サビーネは隠密工事を提案せず、昼間に堂々と進める判断をした。敵がそれを攻撃準備だと誤解する可能性まで報告に書き添えた。
レオンハルトは上申を承認し、作業中に交戦が始まった際の撤退権限も確認した。前線指揮官が判断できない軍は、どれほど皇帝の頭脳が優れていても遅れる。彼はサビーネの報告に、自分が見ていない泥と湿気が書かれていることを重く受け止めた。
観測孔の担当兵は、長い時間目を細めるため頭痛を訴えた。サビーネは見張りを増やすのではなく、交代時間を短くした。昼の光が水面で反射すると、敵の動きが見えにくいことも分かった。皇帝は報告を受け、視界が広がったという言葉の裏に観測できない時間があると知った。
完成した観測孔からは、王国の新しい木柵がよく見えた。サビーネは初めて、王国兵が夜ごと交代する小道も確認した。皇帝はその情報をすぐ攻勢へ結びつけなかった。見える範囲が増えたなら、次は見えない場所を正しく数える必要がある。




