修理された標準
帝国の軍務院で、矢の長さが部隊によって違うと指摘された。レオンハルトは標準寸法を定めたはずだと驚いたが、辺境の工房には古い仕様が残っていた。新しい矢を送るには道が遠く、現地では使い慣れた弓に合わせて作り続けていたという。
クラウスは工房へ新型への切り替えを命じようとした。皇帝は実物を比べ、弓の種類まで違うことを知った。矢だけ揃えれば安全になるわけではない。兵が使う道具は、木工職人の腕と、何年も修理してきた工房の癖を含んでいる。
軍は二種類を区別する色札を設け、補給箱に対応する弓の型を記した。長期的には規格を減らす方針だが、冬までにすべて捨てる案は撤回した。古い弓も手入れが行き届いており、すぐ役に立たなくなるものではない。
リディアは軍用倉庫の空きが足りないと報告した。皇帝は矢を新しい建物へ集めるより、前線で必要な種類を明確にすることを選んだ。倉庫を大きくしても、違う矢が届けば弓兵は撃てない。帳簿の分類を見直す方が先だった。
色札の染料は雨に弱く、見本を水へ浸すと赤と茶の区別がつかなくなった。工房の職人は色のほかに切り込みの形を変える案を出した。レオンハルトはそれを採り、暗い倉庫でも指先で見分けられるようにした。弓兵の手へ正しい矢が届くまで、札は何度でも確かめられた。規格とは人を道具へ合わせる命令ではなく、道具を間違えず渡す約束だった。
翌月、砂州の弓兵は自分の弓に合う矢を受け取った。補給係が札の色を見て渡すだけの仕組みだった。レオンハルトは報告を読み、制度の成功を派手な功績として発表しなかった。矢が当たり前に使えることこそ、軍が整っている証しだからだ。




