矢傷のある鷹
王国の山道で、片翼に矢を受けた鷹が見つかった。伝令の鳥だと疑われたが、脚には識別輪がなく、野生の個体らしい。兵は敵の伝書鳩を探しており、鳥を捕らえたがった。セイルは鷹が暴れれば怪我を広げると止め、猟師へ扱いを頼んだ。
猟師は布で頭を覆い、矢を抜かずに鷹を運んだ。羽根の下で骨が折れているかもしれず、素人の処置は危険だった。村の治療師は動物を診た経験があり、矢尻が翼を貫いていないと確認した。小さな処置が済むまで、セイルは鳥籠の外で待った。
その頃、帝国軍の斥候が山向こうに集まったとの報告が入った。ダリオはセイルを軍議へ呼んだが、彼は治療師へ鷹の見守りを引き継いでから出た。軍議では山道の見張りを増やし、夜間の通行を減らすことが決まった。
鷹の矢傷については最後まで誰が放った矢か分からなかった。王国兵の訓練場から飛んだ可能性も、山で狩りをした者の失敗もある。セイルは傷の向きだけで敵の仕業と決めつけず、猟師へ記録を預けた。戦争の中で起きた傷がすべて、二国の軍によるものとは限らない。
治療師は鷹の食事を用意するため、近くの猟師へ小さな獲物を頼んだ。軍の炊事場から肉を持ち出す案も出たが、衛生のため鳥へ与えられないものがある。セイルは治療師の判断に従い、できる仕事だけ手伝った。鳥籠の下に敷く草を替えたとき、鷹の爪が木を掴む力はまだ強かった。
数日後、鷹は片翼をゆっくり開いた。飛べるかどうかはまだ分からない。猟師は早く放すことを望んだが、治療師は骨が固まるまで待つよう言った。セイルはそのやり取りを聞いて、自由へ戻すためにも待たねばならない時があるのだと思った。




