伯爵の晩餐
帝国宮廷では、国境の勝利を祝う晩餐が開かれた。レオンハルトは招かれた貴族たちの顔を眺め、砂州と峠で得た土地が食卓の話題になっているのを聞いた。ある伯爵は次の秋までに王都を落とせると豪語した。皇帝は返事をせず、彼の領地の収穫予定を尋ねた。
伯爵の土地では春の嵐で穀物倉が倒れ、修理が遅れていた。それでも彼は寄付金を積めば軍功が得られると思っている。レオンハルトは寄付を受け取る前に、倉の修繕と農家への融資を求めた。前線の兵の食事は、酒杯で語る勇気から生まれるのではない。
晩餐の後半、リディアは帝国の南部で税の徴収が遅れていると耳打ちした。伯爵たちは軍費を増やす提案に賛成したが、誰も徴税方法を具体的に話さなかった。皇帝は翌日の会議へ地方役人も呼び、負担の割り振りを机上の計算だけで決めぬよう指示した。
伯爵の一人が王国の軍師について噂した。「敵には何でも見通す男がいるそうです」レオンハルトは面白がる者たちへ、戦報のどこにその証拠があるのか尋ねた。誰も答えられなかった。皇帝は噂そのものを否定しないが、噂を作戦の代わりにはしなかった。
伯爵が約束した穀物倉の修理には、領民が使う水路の清掃も必要だった。皇帝は寄付金の受領書とは別に工事の期限を書かせた。地方役人は宴席の威勢が翌朝には薄れることを知っており、文書に残せたと安堵した。
夜が更け、楽師が最後の曲を奏でた。皇帝は晩餐の寄付一覧を畳み、修繕を約束した伯爵の名を別紙に移した。宴席での言葉を明日の仕事へ結ぶ。レオンハルトにとって、華やかな食卓で得るべきものは賞賛ではなく、責任を引き受けた人間の名前だった。




