泥に隠れた階段
王国の旧街道で、大雨のあとに石段が姿を現した。崩れた土の下から古い道が見つかったと聞き、兵は帝国の背後へ回る抜け道になると喜んだ。セイルはその道を歩いて調べた。石段は半ばで途切れ、続きは急な崖の下に埋もれている。
道の両脇には小さな墓石があった。近くの村の老人が、昔は山の墓所へ行く参道だったと教えた。石を踏んだだけで怒る者はいなかったが、軍が馬車を通せば墓所を壊す。セイルは地図へ階段の位置を記したものの、軍用路としては未確認とした。
工兵は補修すれば通れるかもしれないと主張した。セイルは否定せず、必要な石材と人手を算出してもらった。結果は、同じ労力で別の橋を直した方が多くの荷車を通せるというものだった。参道の工事は急がず、崩落する場所だけ囲うことになった。
村の老人は、墓参りができなくなってから二年になると言った。セイルは軍のための道を優先しなくてよいと感じ、村の石工に階段の安全を確かめてもらった。今すぐ上まで行けなくても、入口で花を供える場所は作れる。
花束を供えた家族は、階段の上に埋葬した親をもう何年も訪ねられていなかった。村の石工は冬が来る前に二段だけ直せると話した。セイルは軍の資材を無断で渡さず、村で余っていた石と職人の賃金を確かめた。修理はゆっくり進むだろう。それでも入口に立つ人が次は一段上がれるなら、道には意味があった。
夕方、階段の下へ花束が置かれた。兵はそれを踏まぬよう道を空け、馬を少し離れた草地へ繋いだ。セイルは新しい軍用地図を折り、墓所の参道には別の印を付けた。見つかった道がすべて戦争に使われるわけではない。




