↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
《適正》の軍師――SSS級冒険者は、天才皇帝の侵攻に挑む  作者: 竜太郎


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
21/192

引き返した騎兵

王国の騎兵隊が、帝国軍の測量隊を追って川の北へ出ようとしていた。若い隊長は、敵が少人数でいる今こそ好機だと息巻いていた。セイルは隊長の馬を眺め、蹄に詰まった黒い泥を指した。雨上がりの北岸には、見た目より深い湿地がある。


「敵が誘っているとでも?」


「分かりません。ただ、この馬では戻るときに疲れます」


隊長は笑った。馬は精鋭で、長い距離を駆けられる。しかしセイルは馬の能力を疑っていない。帰り道だけが問題だった。測量隊を追うほど深い低地へ入り、敵に退路を遮られたら、速さは役に立たない。


将軍ダリオが判断を求めると、セイルは追撃の代わりに北岸の土を採ってほしいと頼んだ。騎兵は短い距離だけ進み、土を革袋に詰めて戻る。土は水を含むと粘り、乾くと鋭い亀裂を作る。工兵たちはその性質を見て、河岸の柵の設置場所を変えた。


騎兵隊長は不満そうだった。敵の測量隊は無傷で帰っていく。「俺たちは見逃しただけじゃないか」


「そう見えると思います」とセイルは答えた。「ですが馬が戻ってきました。明日も動けます」


夜、馬丁が一頭ずつ脚を洗うと、泥の下に小さな傷が見つかった。騎兵隊長は初めてセイルの話を思い出し、蹄鉄師へ早めの手当てを頼んだ。


騎兵隊長は土を採る仕事の報告に、自分の名前だけではなく馬丁の名前も加えた。蹄の傷に最初に気づいたのは馬丁だったからだ。戦果がない日の書類は短い。それでも何も起こらなかった理由を残すことには、意味があった。


一度も剣を抜かずに終わった日の報告書には、土の種類と馬の傷だけが残った。隊長は戦果の欄を空白にしたまま署名したが、その筆圧は朝より少し弱かった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。