軍票の重さ
帝国軍が占めた無人の渡し場では、監察官が一軒の食料倉庫を検めていた。小麦粉の袋は残っていたが、持ち主はいない。兵たちは食糧として運び出そうとした。命令によれば買い上げが原則である。相手がいない時に何を買い上げるのか、現場は判断に迷っていた。
皇帝レオンハルトは監察官の報告に目を通し、倉庫の品を仮に接収する一方、品目と数量を記録して封を残すよう命じた。村人が帰ってきた時に支払うためだ。「戦場でそんな帳簿が役立ちますか」と若い将校が尋ねた。
「役立たせるのだ。勝てなかった場合でも、借りたものは借りたものだ」
ただし軍票は紙片にすぎない。戦が長引き、帝国の信用が失われれば、それで麦は買えなくなる。リディアは金属貨幣の持ち出しを増やすよう勧めた。皇帝は軍票の交換窓口を前線に置き、商人が現金を受け取れる日を指定させた。
夕方、倉庫の奥で腐りかけた袋が見つかった。湿った床の一段高いところへ移せばまだ使える。兵は食べられる粉と捨てるべき粉を分け、監察官はその作業も記録した。食糧の数を正しく数えることが、歩兵の腹を守る。
監察官は倉庫の錠を替えず、元の鍵を封筒へ入れた。皇帝はその処置を評価した。占領の後、持ち主が戻れば同じ扉を開けられる。帝国の旗を掲げても、持ち主の名前まで消してよいわけではなかった。
レオンハルトは自分の給仕が運んできた夕食を途中で止めた。硬いパンが一切れ残ったからだ。数を減らすなと言うなら、宮殿の食卓でも同じでなければならない。冷めたパンを噛みながら、彼は倉庫番が封をする音を想像した。紙に残る小さな数字が、軍の明日の歩幅を決める。




