平原の風車
帝国の平原にある風車群が、徴発した軍用布の乾燥に使われることになった。レオンハルトは許可書へ署名する前に、風車の本来の仕事を確かめた。製粉用の風車であり、羽根の近くへ布を吊れば回転を妨げると職人が警告していた。
地方官は作業を急ぎ、風車の周囲へ布を広げるだけなら問題ないと言った。だが風向きが変わると、布が羽根へ巻き込まれる恐れがある。皇帝は風車から離れた空き地に乾燥棚を設けさせ、布の運搬には軍の荷車を使わせた。小麦を挽く仕事を止める理由はなかった。
リディアは乾燥棚の建設費を計算した。戦時の臨時設備に金をかけることへ反対も出たが、風車が壊れた際の修理費と比べれば小さい。レオンハルトは建設後の維持を地元組合へ押しつけないと決め、軍が使う期間だけ管理人を雇った。
風車の主は軍の人間を好かなかった。それでも職人へ渡す道具の場所は丁寧に教えた。兵は空き地の石を除き、風車へ向かう荷車の通路を塞がぬよう棚を立てた。仕事が終わる頃、風車の羽根は普段通り空を切っていた。
乾燥棚を管理する兵は、風車の主人から雲の動きを教わった。西から灰色の雲が来た日は布を早く取り込まねばならない。軍の予定表には晴れの日だけの時間が記されていたため、翌日から雨天の作業を別にした。レオンハルトはその修正を認め、工房へも同じ知らせを出した。布の枚数を約束するより、濡れずに届ける方法を確かめる方が早い。
皇帝の執務室へ届いた報告には、乾いた布の枚数と挽かれた麦の量が並んだ。片方だけの成果なら、別の何かを奪っていたかもしれない。レオンハルトは軍の服が乾くのと同じ風で、住民の食事も支えられていることを記録に残させた。




