二人の砲匠
帝国の武器工房で、新型の投石機を巡り二人の砲匠が争っていた。一人は射程の長い腕を求め、もう一人は部品の交換しやすい短い腕を推した。レオンハルトは試射の結果を見たが、どちらも自説に有利な日だけ記録していることに気づいた。
皇帝は同じ石を同じ数だけ使い、晴れと雨の両方で試すよう命じた。工房の職人たちは準備に時間がかかると嘆いたが、実戦で壊れれば石を戻してやり直すことはできない。クラウスは長射程型を支持し、砦を遠くから崩す利点を語った。
試射の日、長い腕の機械は見事に石を飛ばした。しかし五射目で軸が歪み、補修に半日かかった。短い腕の機械は届く距離が短い代わりに、車輪の向きを変えるだけで次の位置へ移せた。どちらが勝ったかと問われ、皇帝は用途が違うと答えた。
工房では二人の砲匠が設計図を交換した。長い腕の軸に、短い腕で使う交換部品を組み込めないか検討するためだ。競争していた職人は渋い顔をしたが、図面の上では話が進んだ。レオンハルトは試作品をすぐ前線へ送らず、扱う兵の訓練場所を先に確保させた。
二人の砲匠は試射場に残り、石が落ちた場所を並べて測った。遠く飛んだ石ほど外へ逸れやすく、短い腕の機械は狙う位置に揃いやすい。兵の中には大きな音だけで優劣を決める者もいた。皇帝は石の落下地点を布で示し、見物していた将校たちへ実際に歩いて確かめさせた。
翌週、試験場に壊れた軸が展示された。欠陥を隠さず見せるためだった。皇帝はその前に立ち、故障した機械を失敗として捨てるのではなく、どの条件で壊れたか残すよう言った。武器が大きくなっても、兵の命を預けるのは最後には一本の軸だった。




