眠らなかった門
王国の城壁で、夜警の交代を知らせる鈴が二度鳴った。規則では三度のはずで、兵たちは敵の侵入を疑って身構えた。セイルが駆けつけると、若い夜警が鈴の紐を握ったまま眠りかけていた。三晩続けて別の兵の代役を務めていたという。
隊長は持ち場を離れるなと怒鳴った。しかしセイルが記録を調べると、交代予定の兵二人が川の工事へ移され、夜警の人数だけは古いままだった。働き方が変わったのに勤務表が変わっていない。若者の眠気だけを罰しても、今夜も同じことが起こる。
セイルは城壁から見える道の範囲を歩いて確かめた。南の角塔からは東門の前まで見通せるが、北の狭い通路は壁の陰になる。隊長と相談し、夜だけ監視区画を組み替え、鈴を鳴らす兵には必ず交代を置いた。
日の出前、若い夜警は眠るため兵舎へ向かった。空いた持ち場は古参兵が引き受け、鈴の間隔を自分の耳で確かめた。セイルは新しい表を門へ貼り、増員が届くまでの仮の配置だと大きく記した。仮の工夫を恒久の命令にしてしまうと、またどこかへ無理が溜まる。
夜警の若者が眠りについた頃、川から帰った工兵が交代所へ立ち寄った。自分たちの応援で城壁の兵が減っていたと知り、申し訳なさそうに帽子を脱いだ。隊長は責めず、次の作業依頼には夜警の人数も書くよう求めた。人手の数を別々の部隊で数えていれば、誰かが二人分働くことになる。セイルは一覧表に両方の名を書き足した。
夕方、鈴は定刻に三度響いた。街の人はその音に注意を払わず買い物を続けた。セイルは、それでよいと思った。毎晩安全を知らせる音が、特別な出来事ではなくなるまで。夜警には眠る時間が必要で、門には見張る目が必要だった。




