赤土の軍報
レオンハルトは砂州守備隊から届いた報告書を開き、赤土が付いた端に目を留めた。紙を運んだ伝令の靴も同じ色に汚れている。砂州の地面は灰色のはずだった。問いただすと、伝令は普段の道が冠水し、上流の畑道を通ったと答えた。
皇帝は道の変更を報告に加えさせた。軍報の内容は正しくても、届くまでに要した時間が変われば、命令が現場へ戻る時刻も変わる。クラウスは伝令を増やせば済むと言ったが、雨で通れない道へ何人送っても速くはならない。
リディアは畑道が私有地だと指摘した。軍の馬が繰り返し通れば、麦の芽を踏み潰す。レオンハルトは畑の持ち主へ賃料を払い、道が乾くまで通行数を制限するよう命じた。兵が急ぐ日には例外も必要だが、その例外が日常になれば農地は戻らない。
伝令は通行許可の札を受け取って前線へ戻った。彼は馬を走らせることより、馬が足を取られぬ場所を探すのに時間をかけたと述べた。皇帝はその選択を認めた。報せが遅いのは怠慢とは限らない。届かなければ早かったことに意味はない。
畑の持ち主は馬の足跡を数え、数が増えすぎれば種を蒔けないと訴えた。皇帝は通行許可を一週間ごとに更新するよう命じた。緊急の伝令は通すが、使った回数を後から確認する。畑の主も耕作に使う道を一本残せる。赤土が乾くまでの取り決めは、兵の都合だけでは決められなかった。伝令は新しい札を鞍へ結び付けた。
夜、皇帝は砂州への返書を一通減らした。別々の命令が同じ日に届けば、現場はどちらを先に行うか迷う。必要な指示を整理し、残りは次便へ回すことにした。赤土の跡は乾いて剥がれ落ちたが、地図上には新しい通路の印が残った。




