街道の粉屋
王国の製粉所が、軍の小麦を優先したため村の粉挽きを断っていると聞き、セイルは街道沿いの水車を訪ねた。粉屋は軍から渡された命令書を見せた。兵糧の量は多く、夜まで石臼を回しても終わらない。村人は自分たちの麦を挽く順番を待ち続けていた。
セイルは軍の書類を勝手に変えられない。まず水車の回転数と、石臼が熱を持つ時間を調べた。粉屋は夜中に止めないと石が割れると言った。兵糧係はその事情を知らず、一日中同じ量を挽けると見積もっていた。セイルはダリオへ不足する時間を報告した。
軍からは製粉所を二か所に分ける許可が出た。ただし別の水車までは長い坂があり、荷車の数が足りない。村の農夫たちは、兵糧を運ぶ代わりに自分たちの粉を挽く時間を保障してほしいと申し出た。セイルは契約の内容を読み上げ、軍と村の双方に署名を求めた。
新しい順番が始まると、粉屋の娘が戸口に紙を掲げた。今日は誰の麦を挽くか、帰りの車が何時に出るか。村人は軍の札と自分たちの名前が同じ板に書かれたのを見て、ようやく待つ理由を知った。粉屋は石臼の手入れを終えて、遅い夕飯に戻った。
第二の水車では、製粉に使う石の目が細かすぎると分かった。兵が食べ慣れた粉と違い、焼くと硬いパンになる。粉屋は石の目を替える時間を求め、軍の調理係は水の量を調整した。セイルはどちらの仕事も急がせず、試し焼きの結果を確認した。
セイルが水車を離れるとき、粉屋は薄いパンを一枚渡した。粉の粗い香りがした。兵糧と民間の麦は、挽き分けても同じ水の力で砕かれる。その水が止まれば、どちらの食卓も空になる。セイルは川の流れを確かめ、次の豪雨で水車小屋が危険になる場所を粉屋に示した。




