鉄鉱山の休山日
帝国北部の鉱山で、坑夫たちが一日の休業を求めた。レオンハルトは武器製造の遅れを案じる軍務官と、坑内事故を訴える組合の報告を受け取った。鉱夫は怠けたいわけではない。支柱に使う木が湿り、天井の石が落ちやすくなっているという。
鉱山監督は工事をしながら採掘を続けられると説明した。だが坑夫の一人が、荷車の音で天井のひび割れを聞き分けられないと証言した。皇帝は休業を認め、軍の木材を送らせる前に林業組合へ必要量を確かめた。乾かした木を急に使い切れば、次の支柱がなくなる。
クラウスは矢尻の生産が遅れると不満を示した。レオンハルトは工房に残る不良品の再鍛造を命じ、採掘量だけで武器の数を決めないよう求めた。古い鉄を使えば新しい鉱石の不足を一部補えるが、品質が落ちては兵の命を危険にさらす。鍛冶師に試し打ちをさせることにした。
休業の日、坑夫は地上で子供と昼を食べた。鉱山街の宿屋はいつもより混み、娘が父親の顔を昼間に見られたと笑った。皇帝のもとには採掘量の減少と、補修完了予定日が同じ紙で届いた。数字の一方だけ見れば失敗に見える。
再鍛造された矢尻は、最初の試験で先端が曲がった。鍛冶師は焼き入れの温度が合っていないと認め、納期の延長を求めた。皇帝は失敗品を前線へ送らせず、職人が原因を確かめる期間を与えた。鉱山を休ませて得た時間が、工房での無理によって無駄にならぬように。
レオンハルトは翌月の収量を保証させなかった。支柱が安全だと確認できてから再開する。戦を続ける帝国に鉄は欠かせない。しかし坑内で死んだ者が増えれば、同じ鉱石を掘る手は二度と戻らない。休む一日を許せるかが、国の強さを試していた。




