食卓に戻った皿
王国の避難地で、共同炊事場の陶器が一枚ずつ減っていると相談された。盗難を疑われた老女は怒り、配膳係の若者は泣いていた。セイルは二人を別々に話させたが、どちらにも皿を隠す理由は見つからなかった。食事を受ける人数は増えているのに、洗い場へ戻る皿だけが少ない。
日暮れ前、セイルは食べ終わった人の動きを追った。食堂を出た先には、歩けない老人たちの仮住まいがある。皿はそこで使われたまま、洗い場に運べず積まれていた。運んだ子供は、寝たきりの人が冷たい食事を取らなくて済むよう急いでいたと説明した。
配膳係は一度にすべて戻すよう求めたが、セイルは食事の時刻がずれる家を別枠にした。皿を取りに行く当番を設けると、足の弱い人も毎回頼み込まずに済む。老女は自分が疑われた理由に納得しきれなかったが、若者から謝罪を受け取った。
同じ日、避難地の外には軍の輸送列が通った。馬車が泥にはまり、セイルへ助けを求める声が飛んだ。しかし彼は荷車を押す前に、食堂から戻る子供の道を確保した。軍の重い車輪が踏み固めた土は、子供には歩きやすくても、車椅子には段差になる。
炊事場の釜は朝から絶えず火にかかり、煙で天井が黒くなっていた。老女は皿を盗む者ではなく、煙突掃除を手伝っていた。疑いが晴れた後も手を止めずにいたので、若者は新しい雑巾を差し出した。
夕食時、皿の数は元に戻った。若者が数を読み上げる横で、老女は欠けた一枚をそっと選んで使った。縁の欠けは以前からあり、失われた物ではなかったという。セイルは炊事場の帳面に、数だけでなく遠くへ食事を運ぶ家の名前を追加してもらった。物の行き先には、誰かの都合が必ずある。




